1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:17:15 ID:EGF2NipC0
小鳥(これは穢れにまみれた私にしかできない任務【ミッション】)

小鳥(たとえこれまで築いてきた信頼を失うことになったとしても)

小鳥(私は……やってみせる!)

小鳥(いくわよ! 小鳥!)

小鳥(ピヨ!)

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:20:57 ID:EGF2NipC0
小鳥(さて、当のターゲットは先ほど給湯室に入ったのを確認済み)

小鳥(おそらく紅茶か何かを淹れているのでしょう)

小鳥(そして今、この事務所にいるのは私と彼女の二人だけ)

小鳥(もうここまできたらいくしかないわよ、小鳥!)

小鳥(とっておきの虎の子本をそっと背中に隠し)

小鳥(小鳥は、静かに彼女の元へと向かいます)

小鳥(彼女の、穢れにみちみちた明日を信じて!)

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:25:48 ID:EGF2NipC0
小鳥(さあ、そんなことを独りごちている間に早くも目的地に着いてしまったわ)

小鳥(小鳥は、入り口からそっと顔を覗かせターゲットの動静を確認します)

小鳥「どれどれ……」

美希「……なの……なの……」

小鳥「? (何をしているのかしら)」

美希「……なの……なの……」

小鳥(何か作っている……?)

美希「……なの!」スッ

小鳥「! あ、あれは……ONIGIRI!」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:31:51 ID:EGF2NipC0
小鳥(美希ちゃんったら……おにぎりを作っていたというの!?)

美希「……なの……なの……」

小鳥(おやつかしら? でもおやつにおにぎりとは流石おにぎりの申し子……)

美希「……なの!」スッ

小鳥(! もう二個目も完成……! 早いけど形は整っている……!)

美希「よーし、後はこれを―――」クルッ

小鳥「っ!」

美希「!?」

小鳥「あ……えっ、と……。(し、しまったわ小鳥! 思いっきり顔を出してしまっていたわ!)」

美希「…………」

小鳥「あ、えっと美希ちゃんその」

美希「小鳥! ちょうどよかったの!」パァアアアア

小鳥「……え?」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:44:12 ID:EGF2NipC0
美希「はいこれ! いつも頑張ってくれてる小鳥に、差し入れなの!」スッ

小鳥「! わ……私に……!?」

美希「えへへ……ミキ達がアイドルのお仕事頑張れてるのは……小鳥がいつも、ちゃんと事務方として支えてくれてるからなの」

小鳥「そ……そんな。私なんて、何も……」

美希「小鳥がいなかったら、今のミキ達もいないの。だからこのおにぎりは、そのことに対する、せめてもの感謝のキモチなの」

小鳥「う……ぐすっ……美希ちゃん……」

美希「……ホントはね、春香みたいに、ケーキとかクッキーとか作ってあげたかったんだけど……ミキ、おにぎりくらいしか作れないから……ごめんね? 小鳥」

小鳥「…………」フルフル

美希「小鳥……」

小鳥「……ありがとう、美希ちゃん。私にとってこのおにぎりは、どんなに綺麗なデコレーションケーキよりも……宝物だわ」

美希「小鳥……!」

小鳥「……向こうで、頂いてもいいかしら?」

美希「……もちろんなの!」パァアアアア

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:51:15 ID:EGF2NipC0
小鳥「それじゃあ早速……頂きます」

美希「召し上がれ、なの!」

小鳥「ちなみに、具は何なのかしら?」

美希「こっちが昆布で、こっちがおかかなの」

小鳥「じゃあまずは昆布から……あーん……はぐっ……もぐもぐ……」

美希「……ど、どう、かな……?」

小鳥「もぐ……もぐ……! ……う……」

美希「う?」

小鳥「……うめぇー!!」

美希「わぁ!」

小鳥「み、みみみ美希ちゃん! このおにぎりめっちゃくちゃ美味しいわよ!」

美希「ホ、ホント!?」

小鳥「本当よ! 私、こんなに美味しいおにぎり食べたの初めてだわ!」

美希「……そ、そこまで言ってもらえるなんて……おにぎり冥利に尽きるの」ジーン

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 22:57:43 ID:EGF2NipC0
小鳥「ふぅ……御馳走様でした」

美希「お粗末さまでしたなの。あ、はい小鳥。お茶なの」スッ

小鳥「あ、ありがとう。美希ちゃん」ズズー

美希「えへへ……小鳥がすっごく美味しそうに食べてくれたから、ミキ、とっても嬉しいの!」

小鳥「いやいや……本当、冗談抜きでめっちゃくちゃ美味しかったわよ、美希ちゃん。塩加減もご飯の固さも海苔のしんなり具合も……全てにおいて最高のおにぎりだったわ」

美希「そ、そこまで褒められるとミキ、照れちゃうの……」テレテレ

小鳥(カワイイ)

美希「……あ、そうだ」

小鳥「? 何? 美希ちゃん」

美希「小鳥、ミキに何か用だったの?」

小鳥「え?」

美希「ほら、給湯室でミキを待ってたみたいだったから」

小鳥「! あ、あー……」

美希「?」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:07:57 ID:EGF2NipC0
小鳥「あ、あれはね、その、えっと……」

小鳥(し、しまった……美希ちゃんのおにぎりがガチで美味しかったから、すっかり任務【ミッション】を忘れてしまっていたわ)

美希「?」

小鳥(……でも、今更思い出したところで……)

小鳥(……そんなこと、できるワケ……ないじゃない)

美希「?」

小鳥(こんないたいけな美希ちゃんに……穢れの具象ともいうべき、とっておきの虎の子本を突きつけるなんて……できるわけがないわ)

小鳥(そう、そうよ……そうよ小鳥。あなたは……間違っていたのよ)

美希「小鳥?」

小鳥(人には、越えてはいけない一線がある……。美希ちゃんのおかげで、私はギリギリのところで踏みとどまることができた)

小鳥(だから私はたった一言……彼女に対してこう言えばいい。……『ううん、何でもないのよ』って)

美希「ねぇ、小鳥?」

小鳥「ああ、これを美希ちゃんに見せてあげようと思ったのよ」スッ

美希「えっ」

小鳥「あっ」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:18:17 ID:EGF2NipC0
美希「…………!?」

小鳥「あ、あれ……?」

小鳥(な、ななな何やってるの私!? な、何でとっておきの虎の子本を美希ちゃんに見せてるの!?)

美希「な……何なのなの……? これ……」

小鳥(うわ、美希ちゃん顔真っ赤……)

美希「わ……わけわかんないの。な、なんでその、お、男の人同士で、その、き……」

小鳥「……き?」

小鳥(って! 美希ちゃんに何言わせようとしてんのよ私は!?)

美希「き……s……」

小鳥「え? 何聞こえなかったもう一回言って美希ちゃん大きな声ではっきりと」

美希「…………!」プルプル

小鳥(嗚呼……お父さん……お母さん……ごめんなさい……小鳥はもう、堕ちるところまで堕ちてしまったみたいです……)

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:28:36 ID:EGF2NipC0
小鳥「ねえねえ美希ちゃん? 『き……』の続きを、お姉さんにもう一回言ってみてくれる?」

美希「…………」プルプル

小鳥「あら美希ちゃん? 顔が真っ赤よ? どうしたのかしら?」

小鳥(ウフフ……これでいい……そう、これでいいのよ……小鳥……)

美希「…………」

小鳥「もしかして美希ちゃん、初めて見たのかしら? 男の人同士が キ ス してるところ」

美希「! …………」

小鳥「あらあら、それは悪いことしちゃったわねぇ」

美希「…………!」プルプル

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:29:42 ID:EGF2NipC0
小鳥「でもね美希ちゃん、この先のページには、キスよりもっと先の……」

美希「……とりの……」

小鳥「え?」

美希「小鳥のバカ! エッチ! うわああああああああああん!!!」ダッ

小鳥「あっ!? ちょ、ちょっと美希ちゃ……」

小鳥「…………」

小鳥(……やってしまった……)

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:35:46 ID:EGF2NipC0
~事務所近くの公園~

美希「ううっ……ぐすっ……」

美希「小鳥のバカ……もう絶対許してあげないの……ぐすっ」

雪歩「……あれ? 美希ちゃん?」

美希「! 雪歩」

雪歩「どうしたの? こんなところでうずくまっちゃって」

美希「ぅう……」

雪歩「!? しかも目、赤……まさか、泣いてたの!? 美希ちゃん」

美希「うぅ……雪歩ぉ~」ダキッ

雪歩「きゃっ!? ど、どうしたの? 美希ちゃん」

美希「……小鳥が……小鳥がぁ……」

雪歩「? 小鳥さんが……どうか、したの?」

美希「……実は……」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:42:05 ID:EGF2NipC0
雪歩「……ああ、それはBL本だね」

美希「え? び……びーえる?」

雪歩「うん。BL」

美希「な……何なの? それ」

雪歩「BLっていうのはボーイズラブの略だよ。美希ちゃん」

美希「ぼ……ぼーいず……らぶ?」

雪歩「うん。その名の通り、男の子同士の恋愛って意味だよ」

美希「なっ……!?」

雪歩「? どうしたの美希ちゃん。そんなに顔真っ赤にしちゃって」

美希「ゆ、ゆゆ雪歩こそ平然と何言ってるのなの!? お、おお男の子同士の恋愛なんて、そんなの、ミキ、聞いたことないの!」

雪歩「? そうなの? 今時珍しいね」

美希「!?」

雪歩「だって今や、BLは一大ジャンルといっても過言ではないくらいの勢いだもん」

美希(ゆ、雪歩が何を云っているのか分からないの……)

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/30 23:47:57 ID:EGF2NipC0
雪歩「でもそっかぁ、小鳥さんは腐ってたんだね」

美希「く、腐っ……!? そ、そこまで言わなくてもいいんじゃないかな……」

雪歩「え? だって完全に腐ってるでしょ? 小鳥さん」

美希「か、完全に、って……。(今日の雪歩はなんだか怖いの)」

雪歩「まあでも、美希ちゃんの気持ちも分かるけど……小鳥さんにも、悪気は無かったと思うよ?」

美希「……え?」

雪歩「小鳥さんは、多分、純粋に……自分の好きなものを、美希ちゃんに教えたかっただけなんじゃないかな?」

美希「……自分の、好きなものを……?」

雪歩「そう。美希ちゃんが……自分の好きなおにぎりを、小鳥さんにあげたように……ね」

美希「!」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:00:56 ID:JM1MRDCI0
雪歩「確かに、一般の人には受け入れ難いジャンルかもしれない……でも、それでもきっと……小鳥さんは、美希ちゃんに伝えたかったんだよ」

美希「…………」

雪歩「自分の好きな気持ちを……それに懸ける想いを、情熱を!」

美希「想い……情熱……!」

雪歩「……ただ、その伝え方がちょっとまずかったってだけで……」

美希「…………」

雪歩「だから、その……」

美希「……雪歩」

雪歩「! はい」

美希「……ありがとうなの」

雪歩「え?」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:02:10 ID:JM1MRDCI0
美希「ミキ、小鳥に、おにぎりのことすごく喜んでもらえて、すごく嬉しかったのに……」

雪歩「…………」

美希「……なのに、自分の好きな『びーえる』を勧めてくれた小鳥に、ミキ、ひどいこと言っちゃったの……」

雪歩「美希ちゃん……」

美希「……だから、ミキ、今から小鳥に謝ってくるの!」

雪歩「……うん!」

美希「雪歩のおかげで、ミキ、自分の過ちに気付くことができたの……。雪歩、本当にありがとうなの!」ダッ

雪歩「うん! 頑張ってね! 美希ちゃん!」

雪歩「…………」

雪歩(……なんかすごく適当なこと言ったのになんとかなってしまった……)

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:08:11 ID:JM1MRDCI0
~765プロ事務所~

美希「たのもーなの!」バンッ

小鳥「!? み、美希ちゃん……」

美希「……小鳥」ツカツカ

小鳥「……あ、その、さっきは」

美希「ごめんなさいなの!」バッ

小鳥「……え?」

美希「……ミキ、小鳥の気持ち、何も考えないで……小鳥にひどいこと言っちゃったの」

小鳥「……美希ちゃん……?」

美希「小鳥は、ミキの作ったおにぎり、すごく喜んで食べてくれたのに……。なのにミキは、小鳥の好きな『びーえる』のことを、よく知りもしないのに……ひどいこと言っちゃったの」

小鳥「美希ちゃん……。(何で『BL』って知ってるのかしら)」

美希「だから……ごめんなさいなの」ペコリ

小鳥「美希ちゃん……」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:23:04 ID:JM1MRDCI0
小鳥「……顔を上げて。美希ちゃん」

美希「……小鳥」

小鳥「……謝るのは私の方だわ。美希ちゃん」

美希「えっ?」

小鳥「……本当にごめんなさい。美希ちゃん」ペコリ

美希「ちょ、ちょっと、何で小鳥が謝るのなの!? 悪いのはミキなの!」

小鳥「……ううん」

美希「小鳥……」

小鳥「……確かに私はBLが好きよ……でも、それは誰にも彼にも押し付けていいようなものではなかったのよ……」

美希「…………」

小鳥「ましてや、美希ちゃんみたいないたいけな天使に、何の前触れも無く突きつけるなんて……腐女子道にあるまじき、恥ずべき行為だったわ……」

美希「(婦女子?)な、なんかよくわかんないけど……ミキ、そんなのもう、全然気にしてないよ? 小鳥」

小鳥「美希ちゃん……」

美希「……だってミキ、小鳥がミキに『びーえる』を教えてくれようとしたキモチが、ミキが小鳥におにぎりをあげようとしたキモチと同じだって分かったの。だから……ミキ、もう全然気にしてないよ」

小鳥「美希ちゃん……ありがとう……!(本当は全然違うけど)」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:29:45 ID:JM1MRDCI0
小鳥「じゃあ……折角だから、美希ちゃんももう少し読んでみる? BL本」

美希「うえっ!? で、でもでも、それはやっぱり恥ずかしいの……」モジモジ

小鳥「……そっか……」シュン

美希「あっ……」

小鳥「……そうよね。普通の子は、BL本なんて――……」

美希「わ、わかったの! ミキ、『びーえる』読んでみるの!」

小鳥「! ホント!? 美希ちゃん!」パァアアアア

美希「う、うん……。あ、でも、えっちぃのは、や、なの……」モジモジ

小鳥(ぐうかわ)

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:43:05 ID:JM1MRDCI0
小鳥「じゃあそうね、友情8愛情2くらいの全年齢のやつならいいかしら?」

美希「なんかよくわからないけど、えっちくなければいいの」

小鳥「よーし、じゃあちょっと待っててね。この引き出しの奥に確か……」ゴソゴソ

美希「……小鳥、そんなとこに隠してたの……?」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/01/31 00:47:17 ID:JM1MRDCI0
小鳥「あ、あったあった……って、これは……! (前から探してた部下×上司の下剋上系凌辱モノ(18禁)!? どこに行ったんだろうと思ったらこんなところに!?)」

美希「? どうしたの? 小鳥」

小鳥「え? あ、いや……。(まだ美希ちゃんには見られていない……! だから彼女には一言、『ううん、何でもないのよ』と言えばいいだけ……!)



小鳥「はいこれ美希ちゃんに見せてあげようと思って」スッ

美希「えっ」

小鳥「あっ」




小鳥(……その日から一週間、美希ちゃんは私をゴミを見るような目で見続け、一言も口をきいてくれませんでした)