1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 06:58:37 ID:uIDE3lqQ0
杏子「はぁ? さっきっからアンタ何言ってるかさっぱり分かんないんだけど」

QB「あ、すす、すみ、すみませんすみません!」

杏子「別にそう平謝りするほどのことでもなくない?」

QB「そのあのその……ごっ、ごめんなさいごめんなさい!」

杏子「……まあいいや。あたしこれから急がしいからさ、悪いけど押し売りなら他所行ってやってくれないかな」

QB「あっ、えっとそのあの、その忙しさもぼぼぼ僕と契約すれば」

杏子「じゃ、達者でね」

QB「あ……」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:01:24 ID:uIDE3lqQ0
QB「くそっ! くそっ! これだから低能DQNは!」

QB「僕の話を理解する脳もないなんて!」

QB「はぁ……、やっぱり僕に惑星外営業なんて向いてないんだよ」

QB「大人しく星に残ればよかった」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:02:12 ID:LMkMbZxZ0
ざまあ

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:03:40 ID:uIDE3lqQ0
ほむら「はあっ……」



QB「あっ、あの子からは非リア臭がするな」

QB「さっきのDQNっぽい子は全然無理だったけどこっちなら」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:06:16 ID:uIDE3lqQ0
QB「こっ、こんにちは!」

ほむら「えっ?」

QB「あ、その……」

ほむら「あ……、こ、こんにちは」

QB「……」

ほむら「……」

QB(会話が続かない……)

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:11:10 ID:uIDE3lqQ0
QB「……」

ほむら「……」

QB&ほむら「「あ、えっと……」」

ほむら「ごめっ、ごめんなさいごめんなさい! 先にどうぞ!」

QB「う、あ、う……」

ほむら「は、はい……」

QB「けっ、契約! 僕と契約してくださぁ!」

ほむら「……」

QB「……」

ほむら「そ、それじゃあ……」

QB「あ、うん。さようなら……」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:15:25 ID:uIDE3lqQ0
QB「これだから根暗は! 会話を広げようって気が全くないから困る!」

QB「いちいちどもるし何言ってるか分かりにくすぎ!」

QB「これじゃあ勧誘のしようがないよ!」

QB「はぁ……、歩合制の仕事になんてつかなきゃよかった」

QB「もっとこう、年功序列で、黙ってても給料もらえるような仕事なら……」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:17:07 ID:uIDE3lqQ0
マミ「……」




QB「あっ。DQNでも非リアでも無さそうな子だ」

QB「よ、よーし。今度こそ」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:23:28 ID:uIDE3lqQ0
QB「こここここんにちはっ!」

マミ「喋る動物……?」

QB「はい! ぼぼぼぼ僕インキュベーターって言いましぁす!」

マミ「インキュベーター……、インキュベーター……。うーん、何だかあんまり可愛くない名前ね」

QB「あ、ごっ、ごめんなさい!」

マミ「あっ、こちらこそごめんなさい! 出会いがしらにこんなこと言ってしまって……、失礼にも程があるわよね。
    私は巴マミよ。よろしくね、インキューベーター」

QB「ははっ、はい!」

QB(よし! 今までで一番順調だ!)

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:27:56 ID:uIDE3lqQ0
QB「そ、それでその、実は僕と契や……」

マミ「キュウべぇ! キュウべぇってどうかしら!」

QB「えっ? きゅきゅ、キュウべぇ?」

マミ「あなたの渾名よ! こっちの方がずっと親しみやすいと思うわ」

QB「そそ、そんなことより契約を」

マミ「気にいってもらえたかしら?」

QB「あ、えとその、……はい」

マミ「よかった!」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:32:29 ID:RsNz77K10
まあマミさんもぼっちだからな....(´;ω;`)

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:34:14 ID:uIDE3lqQ0
マミ「そうそう、さっき契約がどうこう言いかけてたけれど、あれは何だったのかしら」

QB「あっ、はっ、はい! えっと、僕と契約して欲しいんです!」

マミ「うーん……。ねえキュウべぇ。中身も分からないまま契約をしろだなんて言われても、
    私は何とも返し難いのだけど……」

QB「あっ! すっ、すみませんすみません許してください!」

マミ「何も頭を下げる必要なんてないわよ。それより、ね、きちんと説明してみてくれないかしら?」

QB「はっ、はい!」

QB「契約というのは……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:39:38 ID:uIDE3lqQ0
QB「この宇宙の寿命を延ばすためにおこなうものです!
   エントロピーということばを知っていますか?
   簡単に例えると、焚き火で得られる熱エネルギーは木を育てる労力と吊り合わないってことです!
   エネルギーは形を変換するごとにロスが生じます。
   宇宙全体のエネルギーは目減りしていくいっぽうなんです。
   だから僕たちは熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めてきました。
   そして僕達の文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明しました!
   ところがあいにく、当の僕らは感情というものが希薄でした!
   そこで、この宇宙の様々な一族を調査し、貴女たち人類に目をつけたのです!
   人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、ひとりの人間が生み出す感情エネルギーは
   その個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕します!
   君たちの魂はエントロピーを覆すエネルギー源にたりうるのです!
   とりわけ最も効率がいいのは、第二次成長期の少女の希望と絶望の相転移です!
   そこで僕たちは―――」

マミ「ちょっ、ちょっと待って! ストップストップ!」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:46:22 ID:uIDE3lqQ0
QB「なな、何でしょうか?」

マミ「話が壮大すぎる上に全体的に早口でよく分からなかったのだけど……、
    希望と絶望の相転移って言ったかしら? そこのところが引っかかったわ。
    もっと詳しく説明してくれないかしら」

QB「はははい! 希望と絶望の相転移というのは、
    第二次成長期の少女に一度大きな希望を与えた上で絶望の底に叩き落とすことで、
    大きな感情の波を起こし、エントロピーを凌駕したエネルギーを生み出そうという理論で」

マミ「もういいわ」

QB「あっ、そ、そうですか!? ででででは契約を」

マミ「するわけないでしょう」

QB「……えっ?」

QB(どっ、どうして!? 完璧に暗記していたマニュアルの内容を暗唱した筈なのに!)

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:50:39 ID:uIDE3lqQ0
マミ「それじゃあさようなら」

QB「あっ、ちょっと待って! 契約! 契約を……」






QB「くっそぉおおおお! 中途半端に期待させやがって!」

QB「最後にはゴミを見るみたいな目でこっちを見ていきやがったし……」

QB「あああああっ、僕の何が悪いんだよ!」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 07:58:18 ID:uIDE3lqQ0
さやか「ちょっとまどか、見てよあれ!」





QB「DQNも駄目、根暗も駄目、お姉さん系も駄目」

QB「どうすればいいんだろう……」

QB「はあっ……、困ったな……」





まどか「……? 動物が喋ってる……?」

さやか「電池で動く人形とかかな?」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:06:37 ID:uIDE3lqQ0
QB「あと残るは……、妹系?」

QB「う、うん! なんとなく騙しやすそうな響きだ!」

QB「そうと決まればさっそく……」

さやか「おおっ! すごっ! 近くで見るとますます本物の生き物みたい!」

まどか「本当だね。かわいいなぁー」

QB「あっ、き、君達! えっと……、君たちは妹ですか!?」

さやか「へっ? ううん、私一人っ子だけど」

まどか「私はむしろお姉さんかな」

QB「そっか、残念……あっ、ち、違った! 契約だ! 契約してください!」

さやか「はいぃ? ごめん、イマイチ話の流れがつかめないんだけど」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:07:44 ID:PotBkoBh0
非リアにさやかはきつそうだ……

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:15:14 ID:uIDE3lqQ0
QB「あ、えっと、あの契約というのは……」

QB(だ、駄目だ! さっき巴マミは契約の内容を説明した途端態度を豹変させた!
    なんとか契約の内容を隠したまま押し通さないと!)

まどか「契約というのは?」

QB「い、言えません」

さやか「はぁ?」

QB「あ、ご、ごめっ、ごめんなさ……」

さやか「……どうでもいいけどさ、アンタなんでそんなにハッキリしない喋り方なの?」

QB「え、えっ?」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:20:32 ID:uIDE3lqQ0
まどか「さ、さやかちゃん! そんなこと言ったら可哀想だよ!」

さやか「そうは言ってもねぇ。こういう手合いのを見てるとどうにもイライラするというかさぁ」

QB「う、ああ、う……け、契約……」

さやか「あー、またそれ? 馬鹿の一つ覚えみたいに契約契約言われても、
      肝心の内容が分からないんじゃどうしようもないっての」

QB「あ、ごめ……なさ……」

まどか「私はするよ、契約!」

さやか「ちょっとまどか!?」

まどか「だってこの子困ってるみたいだもん。放っておけないよ!」

さやか「止めときなよー。そんなんと関わっても絶対いいことないって」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:21:12 ID:oIliofDc0
まどかマジちょれぇッス

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:31:48 ID:uIDE3lqQ0
まどか「もしかしたらそうかもしれない。でもねさやかちゃん。
      私、ここでこの子を無視したら、ずっとそのことを後悔しそうな気がするんだ」

さやか「ま、あんたはそういう子よね……」

まどか「私はいつだってその時その時にできる精一杯のことをしたいから……。
      なんて、格好つけ過ぎかな、えへへ」

さやか「はあっ、仕方ないなぁー。こうなった時のまどかは頑固なんだから」

まどか「! じゃあさやかちゃん!」

さやか「そいつのことは気にいらないけど、まどかがそんなに言うんならね。
      私もまどかに付き合ってあげる」

QB「いいい一気に二人も!? ああああありがとうございますありがとうございます!」

まどか「よっ、よしてよ土下座なんてー」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:41:51 ID:uIDE3lqQ0
QB「じゃじゃっ、じゃあいきます!」

さやか「良く分かんないけどとっととすませちゃってちょうだい」

まどか「うん、お願い」

QB(ああ、長かった……本当に長かった……だけどようやく苦労が報われる時がきたんだ。
    さあ、さっさと契約をすませよう)

QB(えっと、まずは魂を分離させ―――)



ピーピーピー



まどか「?? 何の音かな?」

QB「あっ、ごめんなさい! ちょちょ、ちょっと職場から連絡がきたみたいです!」

さやか「職場?」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:43:21 ID:uIDE3lqQ0
QB「は、はい、もしもし! こちらインキュベーターです!」

QB「はい! はい! ……えっ? あ、はい……」

QB「……で、でも、あの……今2件契約が……」

QB「ひぃっ!? すみませんすみません! いい言い訳してすみません!」

QB「……えっ? く、首!? えっ!?」

QB「あ、はい、分かりました……も、文句は無いです……」






QB「……」

まどか「……」

さやか「……」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:49:56 ID:uIDE3lqQ0
QB「……」

さやか「あー、その、元気だしなよ!」

まどか「そ、そうだよ! 事情は分からないけど、きっとなんとかやり直せるよ」

QB「もう……いいんです……」

さやか「そ、そう諦めなくってもさ! 頑張りゃきっとなんとかなるなる!」

QB「むむ、無理ですよぉ! だって僕なんて……か、会話もうう上手くできないし……。
    たっ、たたっ、ただでさえ省エネで、産業が縮小してる時代なのに……再就職なんて……」

さやか「……」

まどか「……」

QB「……」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 08:51:55 ID:uIDE3lqQ0
QB「はぁ……」

QB「結局僕なんて……誰からも必要とされてないんだ……」

QB「もう死のうかな……」







杏子「随分しけた面してんなぁ、おい」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 09:37:39 ID:uIDE3lqQ0
QB「君は……、いや、なんかもうどうでもいいや……」

杏子「なーんだ、やっぱり押し売りは上手くいかなかったのか」

QB「おっ、押し売りじゃないよ……」

杏子「ま、似たようなもんでしょ? あー、隣いいかい?」

QB「うん……」

杏子「いきなりだけど、あたしさー、近所で変な渾名をつけられてんだよね。どんなんだと思う?」

QB「そんなの分からないよ……」

杏子「そりゃそうか。……カルト、だってさ」

QB「カルト?」

杏子「そ、カルト教団のカルト。親父が宗教家だから、ちょっとまあそういう関係でな」

QB「そうなんだ……」

杏子「といっても、親父の教えは何も極端なことを言っているわけじゃない。
     食べ物を粗末にするな、だとか、そういう当たり前のことを積み重ねただけの、
     少し話を聞けば誰だって納得してくれるような内容のものなんだ」

QB「……」

杏子「だけど誰も耳を貸してくれやしない。そんなもんなんだよな、世の中ってさ」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 09:45:00 ID:uIDE3lqQ0
QB「ぼ、僕の契約だって……本当は、宇宙の為になることで……」

杏子「でも誰にも聞いてもらえなかった、ってか?」

QB「そ、そうなんだよ! でっ、でね! やっと聞いてもらえたと思ったら、そしたら首になって!」

杏子「落ち着けっての。話がとびとびで支離滅裂」

QB「あっ……、ごごっ、ごめん」

杏子「だーから落ち着きなって。……でもさー。どこか似てるよな、あたしたちの境遇」

QB「似てる?」

杏子「そ。自分じゃ正しいと思ってることを受け入れて欲しくって、
    声の限り精一杯叫んでんのに、てんで聞き入れてもらえないってとこがさ」

QB「……うん、そうかもしれない」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 09:51:31 ID:uIDE3lqQ0
杏子「なあ、だからさ……ウチにこないか?」

QB「えっ?」

杏子「別に同情したとかそんなんじゃないよ。
     ただ、それでもさ、一人ぼっちは寂しいだろ?」

QB「……」

杏子「そういうのをほっとくのは後味が悪い。
     だからこれはアンタのためじゃなくてあたし自身の為。自惚れないでくれよ」

QB「……君、よく素直じゃないって言われない?」

杏子「さあなー」

QB「……」

杏子「で、どうする? 余計な世話だってんなら、聞かなかったことにしてくれてもいい」

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 09:53:59 ID:PotBkoBh0
やっぱあんこさんは天使やったでぇ

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:02:26 ID:uIDE3lqQ0
杏子「ただいまー……、っと」

妹「おかえりお姉ちゃん! ……あれ? その包みは何?」

杏子「しーっ! 親父にばれたらマズいから静かに!」

妹「もしかしてまた何か盗んできたの……?」

杏子「違う違う! ……まあアンタになら話してもいいか。
     ちょっとあたしの部屋に行こう。そこで見せてあげるから」



QB(つい勢いでついてきちゃったけど大丈夫なのかな……)

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:08:17 ID:uIDE3lqQ0
杏子「ほら、これだよ」

妹「わあっ! 可愛い!! お姉ちゃんこの子どうしたの!?」

杏子「ちょっ、声が大きいって! 親父にばれる!」

妹「お父さんなら大丈夫だと思うけどなぁ。むしろ褒めてくれるんじゃない?
   博愛の精神がどうこうって」

QB「はっ、博愛……?」

妹「しゃしゃしゃ喋ったぁ!?」

QB「っ!?」ビクッ

杏子「あー、そうだった。さっきまで自然に話してたから忘れかけてたけど、
    これって異常なことだったな……」

妹「しかも声がすっごく可愛いぃー!」

QB「あ、く、苦し……強く抱きしめすぎ……」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:20:15 ID:uIDE3lqQ0
杏子「はいはいそのぐらいにする!」

妹「はーい」

QB「ほっ……」

杏子「まーったく、アンタ変なところで大胆だよな」

妹「えへへ……」

杏子「ところでお前、えーと……」

QB「い、インキュベーターだよ」

杏子「じゃあ、インキュベーター。アンタさっき博愛って言葉に妙に反応してなかった?」

QB「あ、う、うん。僕達の星の言語に上手く変換されない言葉だったから気になって」

妹「変換?」

QB「あ、ちち違った! えっと、その、僕の知らない言葉だったから……」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:31:17 ID:uIDE3lqQ0
杏子「博愛ってのはな。全てのものを平等に愛するっていう、
     ちょっと常識的に考えて不可能に近い理想のことだよ」

QB「全てのものを平等に……愛する……」

妹「もうっ、お姉ちゃんったら。そんなこと聞いたらお父さん悲しむよ?
   お父さんは本気で博愛主義を貫こうとしてるんだから」

杏子「……言うなよ。親父には絶対言うなよ」

妹「うーん、どうしようかな」

杏子「おい待てよ! また親父のあの説教聞かされるのだけは本気で勘弁してほしいんだけど!」

妹「じゃあ晩御飯のデザートのりんご一切れ!」

杏子「お前ってやつは……はいはい、分かったよ。
     ったく、この意地汚さは誰に似て―――」

QB「あはははっ……」

杏子「ん? インキュベーター、お前今笑ったのか……?」

QB「え、えっ? ぼ、ぼぼ、僕が……笑う?」

QB(ぼ、僕はただ……強そうな彼女が妹相手にたじたじになる姿が……なんだかおかしくて……。
    ……おかしい? そうか、これがおかしいという感情か……)

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:35:47 ID:uIDE3lqQ0
杏子「っと、いけない。そろそろ夕方の掃除の時間だ」

妹「あっ、そうだね。それじゃまたね、キュウべぇ」

QB「えっ?」

妹「んー、気にいらなかったかな? インキュベーターじゃ長かったから、とっさに渾名考えたんだけど……。
   まあいいや、またあとでねー」

杏子「大人しくしてろよー」

QB「あ、う、うん……」

QB(渾名の一致は偶然としても……、僕の名前はそんなにおかしいのかな?
    星にいた頃は誰もそんなこと気にも留めなかったのに……)

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:58:51 ID:uIDE3lqQ0
QB(僕は今まで……偉い立場の相手に言われたことを黙ってこなしてきた)

QB(感情をエネルギーにする作戦を聞いた時も、何の考えも持たずに……)

QB(自分には感情がないと思っていたから……)

QB(そんな原始的なものを持っている存在は、犠牲にしてもいいのだと信じ込んで……)

QB(でも僕は笑えた)

QB(僕には本当は感情があったんだ……)

QB(だとしたら、僕と彼女達の間に一体どんな違いがあるというんだろう)

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:59:06 ID:uIDE3lqQ0
QB(博愛、か)

QB(宇宙の為にこの星を切り捨てようとするやり方は、ちょっと博愛の精神にはそぐわないかな)

QB(自分の星とこの星の優先順位に差をつけてしまってる時点で……)

QB(……)

QB(エネルギー源になるのは、何も人類じゃなくてもいいよね)

QB(むしろ滅びるのが、よりエネルギー消費量の高い高度な文明のも持ち主なら、
    エネルギーの減少量は大幅に抑えられる)

QB(ちょっとやることができちゃったな……)

QB「――――――――」

QB(あはは、僕は最後まで言いたいことを面と向かって言えずに……)

QB(まあいいや。こんな照れ臭いこと、聞かせる必要ない)

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 10:59:52 ID:uIDE3lqQ0
QB「……」

上司1「ん? どうしたんだねインキュベーター。君にはもう任務から外れてもらった筈だが」

QB「インキュベーター? 違うよ。今の僕はキュゥべぇだ」

上司2「君は何を言っているんだ?」

上司1「まっ、待て! もしかして君は……」




その日、宇宙から一つの文明が消え去った。

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/03/27 11:00:39 ID:uIDE3lqQ0
杏子「戻ってきたよキュウべぇ。
     しかもなんと特別に少しだけりんごを持ってきてやった! 食うかい?」

妹「あっ、あれ……? お姉ちゃん、キュゥべぇいないよ」

杏子「おっかしいなー。あいつ逃げちまったのか?」

妹「きっとお姉ちゃんが怖いからだよ」

杏子「いや、あいつにとっちゃお前の方が怖いだろ!」

妹「ええーっ」

杏子「でもまあ、不思議な奴だったよなぁ……」










QB「さよなら赤毛の女の子。僕は君と話していて楽しかったんだと思うよ、きっとね」




おわり

引用元: 非リアQB「ぼ、ぼぼぼ、僕と契約しししし」