2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 14:39:58.14 ID:vT4XWxmG0
50段目

丁度半分の区切り。どんなこと聞こうかな、なんて決まってる。

美波「アイドルとして、私はどうだった?」

気になる点として、今までの私は、だ。

P「どうって…そりゃ、凄かったよ」

美波「もっとこう、具体的にないんですか?」

P「具体的にってもなぁ。勿論、魅力的だったよ、カワイイし、綺麗だし」

美波「ん…」

望んでいた答えとは少し違うけれど、こう好きな人から褒められると所謂お世辞というやつだとわかっていても嬉しい。

でも照れくさくて言葉を返せなかった。

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 14:43:36.24 ID:vT4XWxmG0
P「次51段目か。いよいよ後半戦だな」

美波「後半戦って、別に戦ってるわけじゃないんだから…」

P「気合いを入れていこうな!」

もう、と言って笑うとつられてプロデューサーさんも笑った。

なぜだかほっとする。

P「そうだな、次の質問は…」

うーんと唸って考える。そろそろネタのバリエーションも減ってきたころかな。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 14:47:12.65 ID:vT4XWxmG0
P「好きな食べ物ってなんだ?」

あ、同じこと考えてた。なんだか少し嬉しい。

美波「一つあげるとしたらグレープフルーツかな?」

みずみずしくて、甘酸っぱいあの味が好きだった。

皮剥くのは少し大変だけど。

美波「52段目、プロデューサーの好きな食べ物!」

P「ん、俺か。そうだなー、ハンバーグかな」

お昼に食べたからかな?そう思って尋ねると、それもあるかもとプロデューサーさんは笑って答えた。

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 14:51:25.44 ID:vT4XWxmG0
ところで・・・

美波「なんで水着なんですか?」

P「・・・・・・」

P「少しずつみえてきたな」

話題をそらした・・・

美波「うん…」

100段目になったら、言おうと思う。

例えどんな結末になろうとも。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 14:56:28.37 ID:vT4XWxmG0
美波「そういえば、あの日もこんな感じでしたよね」

思い出す、あの日のことを…。

P「そういえばそうだなー。今と同じように、夕日がちょっと眩しかった。今もちょっとみえる夕日が眩しいね」

……。

美波「96段目の質問は」

P「なんかちょっと不機嫌になってない?」

なってない。

美波「これからやりたいこと」

P「ん?似たような質問しなかったか?」

んー?そうだっけ…

美波「プロデューサーとして!」

P「プロデューサーとして、か。やっぱり、プロデューサーとして最後まで美波をプロデュースしたいかな」

当然のことです!と言おうとしてやめた。何故か、彼の目は真剣で、少し悲しそうな目をしていたから。

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:01:43.86 ID:vT4XWxmG0
P「美波はアイドルとして、なにをやりたい?」

そういえばこんな質問したかも…

美波「やりたいというかなりたいというか。やっぱり、トップアイドルかな」

それが、プロデューサーさんへの恩返しにもなると思うし。

P「うん、何度もいうようだけど、美波ならなれるさ」

この自信はいったいどこからうまれるのやら。

でも、この言葉は沢山後押ししてくれた。

確かに、この人とならなれるんじゃないかと思ってしまうほどに。

逆に言えば、この人がいなければここまでくることもなかっただろう。

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:04:11.81 ID:vT4XWxmG0
P「次、美波だよ」

美波「え!あ、うん。」

98段目、あと二個。

緊張してきてしまった。

美波「私って、プロデューサーさんからみてどんな人?これは、アイドルとか関係なしに」

P「ん、そりゃやっぱり真面目ってのがすぐあがるかな。なにごとにも真剣に取り組んでさ、それにしっかりしてる!そういうところに何度も助けられたよ」

美波「プロデューサーさんってちょっとおっちょこちょいですもんね」

彼は面目ない、と言って笑った。

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:07:06.25 ID:vT4XWxmG0
P「でも美波だって抜けてるところはあったよ」

美波「そ、そんなことありません。次の質問しますよ!」

P「次は俺な?」

美波「わかってます!」

ケラケラと笑われた。むぅ。

P「俺からの最後の質問。プロデューサーとしての俺は、どうだった?」

美波「頼りないなって思います」

P「え"っ」

美波「冗談ですよ、そんなにショックをうけないでください」

ほっとして苦笑いする彼をみてると、また少しからかいたくなってしまう。

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:10:19.22 ID:vT4XWxmG0
美波「プロデューサーさんは凄く頼りになりました。私のこと、きちんと考えてくれるし、大切に思ってくれるし」

P「まぁ、大事なアイドルだからな」

そう、アイドルだから。

美波「いつだって私を支えてくれました。私がなにかに悩んでいたり、なにかに戸惑ってるときも、あなたはいつも側にいてくれた」

美波「そのおかげで、私は今までやってこれたって思ってる」

美波「だから、本当に感謝してる、ありがとうだけじゃ足りないくらいに」

プロデューサーとしてだけじゃないくらいに…。

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:14:08.95 ID:vT4XWxmG0
P「な、なんかそこまで言われると照れるな…」

美波「でも、本当に感謝してるんです」

しばしの沈黙が流れる。

次がいよいよ100段目、ラストになる。言おう、今言ってしまおう。多分、次なんてないから。

美波「最後の質問の前に、言っておくべきことがあります」

私のいうことを、静かに聞いていてくれる

美波「私、プロデューサーさんのこと、好きです。アイドルの新田美波としてではなく、一人の女として、あなたのことが大好きです」

プロデューサーさんは黙っている、返事もしにくいよね。

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:17:30.08 ID:vT4XWxmG0
けどやっぱりちょっと悲しいかも。

でもまた、いつも通りアイドルとプロデューサーの関係に戻って、いつも通りのアイドル業に勤しむだけだ。

それだけだ、きっとこれからもこの人の側にいられる、それだけで良い。

…なんて思ってた。

もう私のこの気持ちは、声さえも、彼には届かない。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:21:18.75 ID:vT4XWxmG0
監督のタイムの掛け声が響いた。

ぞろぞろと近くに集まる、重い足を、なんとか動かして

監督「時間てきにこれがラストになるでしょうね。全員でライン押し上げるけど、美波は最初センターライン越えないでいて」

監督「パスは千秋とまどか中心に、その間に美波は大きく回ってボール貰ったらシュートよ、いい?」

「はい!」

全員の声が重なる、この瞬間がなんとも言えない。

途中まで順調だった。

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:25:21.56 ID:vT4XWxmG0
全員があがりぎみになれば誰がシューターになるか分からない。

私はその戦区を大回りして走りぬける。

まどかからのパスが回ってきた。

頑張れ、みたいなこと言ってるみたいだがよく聞こえなかった。

足が重い、下手すれば絡めて転んでしまうかもしれない。

息もうまく吸えない、喉が痛い。

短く強く腕を振る、がうまく力が入ってるかわからない。

ボールがネットから離れていくのが、ゆっくりに感じられた…。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:28:33.01 ID:vT4XWxmG0
綾香「うー、もう足うーごーかーなーいー」

足をプラプラさせながらチームメイトが言う

千秋「いっつも言ってるよね…」

綾香「今日はマジだって!まぁ美波ほどじゃないけどさ。さすがにあんだけ走らされてたら鈍るよな」

美波「ご、ごめん…」

まどか「なに言ってんのさ、美波が入れられなかったら、だれも入らないよ」

綾香「ていうかあのファインセーブ、凄かったよなぁ」

千秋「うん…」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:33:19.99 ID:vT4XWxmG0
なんだか空気が重くしてしまいそうだったので、私は少し早めに上がって一人で帰った。

美波「はぁ…」

足がガクガクする、足取りも重い。

そうだ、あの場所に行こう。

なにかあったときにいく夕日が綺麗なあの場所。

ただ今日は、少し違っていた。

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:36:17.42 ID:vT4XWxmG0
裏路地を抜け、ちょっとせまい街道を歩くと、階段が見えてくる。

段数はとても多く、試合のあとなんかはかなり辛いがそれでも登らせてしまうなにかがあった。

登り終えて夕日の眩しさになれると、一人の先客がいることがわかった。

ベンチに座ったスーツ姿の男性。

私も座りたかったので、一つしかないベンチの側に寄った。

向こうがこちらに気が付くと、会釈をしてきた。

こちらも返して、ベンチに腰掛ける。

この場所は結構高いところにあって、静かで癒される。

私のお気に入りの場所。

夕日がみえる丘ベンチと呼んでいる、心のなかだけで。

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:39:27.36 ID:vT4XWxmG0
ぼーっとしていたら、隣の人が話しかけてきた。

よくみるとまだ若い、私と同い年ぐらいか少し上だろうか。

「なんだかここって、安らぎますね」

美波「えぇ、私もなにかあったとき、よくここくるんです」

「へぇ、ということはなにかあったんですね」

普段は知らない人となんかはあまり喋らないのだが、今日だけは違った。

この場所のせいなのか、それともこの人の独特の雰囲気のせいだろうか。

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:42:20.41 ID:vT4XWxmG0
美波「私、ラクロスやってるんですけどね、今日試合があって負けてしまったんですよ…あなたも、なにかあったんですか?」

まぁね、といいながらその人はカバンを漁った。

そしてそのまま名刺を渡してきた。

美波「プロデューサー?」

P「うん、アイドルプロデュースをしてるんだ」

なんだか凄いと思った、ピンと来なかったけど

P「今日で、担当していたアイドルがやめてしまったんだ。僕の腕が足りなかったのも、大きな要因の一つかな」

そう言って寂しそうに笑う。

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:48:13.81 ID:vT4XWxmG0
P「なんだかあなたといるとなんでも話してしまいそうになる、気持ちが楽になるというか…」

そうだ、と言ってプロデューサーと名乗る人は一つの提案をしてきた。

P「アイドル、なってみない?」

え…

美波「えぇ!?アイドルですか?」

P「そう、アイドル」

美波「私が、なんて…ムリですよ。なんの取り柄もないですし」

自分で言ってて、なんだか悲しくなってきた…

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:50:38.38 ID:vT4XWxmG0
P「そんなことはない。第一、俺はあなたになにかを感じました」

P「それにあなたといると、ホントに心が自然と広がるというか…アイドルには、そういうのも大事なんですよ」

そう言って微笑む。

そうなのかな…思わず乗せられてしまいそうになる。

P「先ほど渡した名刺に、事務所の住所が載ってるから気が向いたらでいい、訪ねてよ」

じゃあ、と言ってその男の人は去っていった。

アイドルかぁ…柄にもなくウキウキしてしまった。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 15:54:42.56 ID:vT4XWxmG0
次の休みの日、結局私はいくことに決めた。

どうせ家でうじうじしてるだけになるだろうし、気分転換にも丁度良い。

それとなぜだか、あの人ともう少しお話ししたくなっていた。

褒められたからって調子に乗ってしまってるのかな…。

とにかく、人生経験にもなるし行ってみよう。

美波「ここがそうかな?」

住所の場所にたどり着いた。

なんか想像してたよりもこじんまりとしてるけど、こういう方のが落ち着いて入れる。

ドキドキは、やっぱりしてるけど。

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:00:57.81 ID:vT4XWxmG0
美波「し、失礼します」

面接するときみたいな感じでかしこまって入ってみたけど、すぐにそれはとかれた。

P「やぁ、きてくれたんだ。じゃあこちらへどうぞ」

彼のにこやかな笑顔に、なぜかほっとした自分がいて、緊張はほどよくほぐれた。

P「ここが、俺たちの事務所」

大きくはないんだけどね、と付け加えた。

改めて見回すと、他にも似たような格好の人が数人いた。

P「まぁ挨拶は後ほどにな。早速本題だけど、アイドルになってみたいと思う?」

美波「自信は、あまりないんですけど…」

P「大丈夫、自信なんて後からついてくるもんさ」

この人が言うと、なんだか本当にそんな気がする。

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:01:31.68 ID:vT4XWxmG0
美波「なら私、やってみようかなって」

うん、じゃあ決まりと言って手を差し出してきた。

P「これから、僕が君の担当プロデューサーだ」

美波「よ、よろしくお願いします!」

そう言って握り返す。

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:04:54.34 ID:vT4XWxmG0
改めて自己紹介をし終えたところで、この業界についての軽い説明をして貰った。

聞いたことを完結にまとめると、まずアイドル達はデビュー前の所謂候補生というものから始まるらしい。

そこからデビューして少しずつ雑誌やらCDやらをだしていくみたい。

そしてアイドルには売上等によってランクが決まってくるらしい。

A~Fまであって、テレビとかで活躍してる人は基本B以上らしい。

P「そしてもちろん、目指すはアイドルマスターだ」

美波「アイドルマスター?」

P「うん、さっきいったように、アイドルにはAからFまでのランク付けがされてるって言ったよね?」

P「んでその一番上のAランクアイドルのなかでも、さらにトップにいるのがそのアイドルマスターと呼ばれてる人たちなんだ」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:07:34.78 ID:vT4XWxmG0
美波「そのアイドルマスターって、何人ぐらいいるんですか?」

P「今は一人だよ」

ひ、一人ぃ?!そんなのムリに決まってるじゃないですか…。

ん?

美波「今はって?」

P「アイドルマスターとして認められた人は、その翌年のアイドルマスター認定、通称アイマス認定にはでれないんだ」

美波「じ、じゃあその人たちはどうなるんですか?」

P「その人たちは俗にSランクアイドルと呼ばれていて、なんていうランクはあってないようなものかな」

美波「どういうことですか?」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:10:46.60 ID:vT4XWxmG0
P「そうだな、天皇みたいなもんかな」

天皇ですか・・・

P「あの人たちって、特別偉いとかそういうことってないだろ?でも人々の象徴として崇められてる。それと似たようなもんだよ」

美波「う~ん」

しっくりこない、それに崇められてるようなものって…。

美波「でもそれって毎年アイドルマスターが決まってるってことですよね?」

P「それがね、少し違うんだ」

P「さっきも言ったように、Aランクアイドルのトップにたつものがそれになるってことに変わりはないんだけど、それだけじゃないんだ」

美波「それだけじゃない?」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:13:15.74 ID:vT4XWxmG0
P「うん、簡単に言うと、他のアイドルが足元にも及ばないぐらい凄いアイドルって感じかな。そんな人が毎年審査で決まるんだ」

美波「つまり、出ない年もあると」

P「うん。だからアイドルにとってアイドルマスターってのは、目標と同時に夢のようなものでもあるんだ」

そんななかでアイマスになってる人がいるなんて、凄い人がいたもんだ。

P「そしてもちろん、俺たちが目指すのもアイドルマスターだ」

美波「うーん、なんだか果てしないですね」

本当に大丈夫だったんだろうか…

P「そんなわけでまずはレッスンからだな」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:16:20.49 ID:vT4XWxmG0
P「今日のところはとりあえず説明だけで終わるけど、明日からは学校の後でもレッスンがはいるから、体調管理には気をつけてな」

P「目指そうな、アイドルマスター!」

美波「はい!」

まだきちんとしたアイドルではないけれど、家に帰ってこれからのことを考えるとわくわくとドキドキが入り交じってなかなか寝付けなかった。

美波「うきゃー!!」

弟「うるさいよー」

ごめんなさい。

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:19:29.68 ID:vT4XWxmG0
レッスンに関しては学校が終わってから、ラクロスの練習と半々でやることにした。

休みの日は午前にラクロス、午後はレッスンというふうに区切りをつける。

そして今日は初めてのレッスン。歌なんかは友達とたまにカラオケはいくけど・・・

P「今日はダンスレッスンだ!」

とのことです。

美波「主にどんなことするんですか?」

P「うん、そうだな、まずはレッスンの種類から説明だな」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:22:04.38 ID:vT4XWxmG0
P「ダンス、ヴォーカル、そしてビジュアルレッスンの三つに分別されてる」

P「ヴォーカルは歌関係、発声やリズムとったりだな」

P「ビジュアルはポーズ練習や体型維持」

P「ダンスは曲に合わせての振り付けだが、今は持ち曲がないから練習曲、基礎からだな」

美波「私、ダンスなんてやったことないけど・・・」

プロデューサーさんは大丈夫大丈夫と笑いながら行ってしまった。

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:26:01.09 ID:vT4XWxmG0
P「こちらが今日お世話になるトレーナーさんだ」

美波「よろしくお願いします」

トレーナー「こちらこそよろしくお願いします」

なんだかトレーナーさんも綺麗な人だなぁ。

P「じゃあ頑張ってな」

美波「プロデューサーさんはどこにいくんですか?」

P「俺は打ち合わせとか、営業、まぁアイドルの売り出しにいくんだよ」

なるほど、私のためにありがとうございます。

トレーナー「美波さんは今までにダンスの経験ってある?」

美波「いえ、まったく・・・」

ならまずはさわりからね、という言葉にほっと一息ついたもつかの間、終わるころにはパンパンになっていた。

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:28:59.30 ID:vT4XWxmG0
美波「あ、ありがとうございました、失礼します・・・」

トレーナー「はーい、お疲れ様」

外に出るとプロデューサーさんが向かえにきていてくれた。

P「お疲れ様、はいこれ」

まだ飲み物は残ってるけど、彼からもらったスポーツドリンクで喉を潤すことにした。

ちょっとヒンヤリして、心地よかった。

P「とりあえず今日は初日ということで家の近くまで送ってくよ」

美波「あ、ありがとうございます」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:33:52.20 ID:vT4XWxmG0
P「どうだった?あまり慣れてない人にとっては辛いものだって聞いたけど、疲れたろ?」

美波「確かに疲れましたけど、でも身体を動かすこと好きなので、楽しいですよ」

美波「プロデューサーさんもどうですか?」

P「お、俺は遠慮しとくよ・・・」

他愛も無い話をしていたら、いつの間にか家の近くまできていた。

美波「今日はありがとうございます」

P「いやいや、案外遠くないみたいだしな」

P「今日はゆっくりと休んで、疲れとってな」

そう言ってプロデューサーさんは来た道を戻っていった。

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:38:11.05 ID:vT4XWxmG0
美波「ただいま~」

美波母「あらおかえり、アイドルしてきたの?」

美波「ダンスレッスンっていうのをね~してきたんですよぅ」

グダグダとなりながらリビングのソファに流れ込む。

美波母「まぁ反対はしないけど、勉強のほうもしっかりしなさいよ?」

わかってる、勿論学業のほうをおろそかにするつもりはない。

アイドルをやっているのは、ただ新しいことに挑戦するためだから。

食事を終え、お風呂を上がって身支度をしたころには11時を回っていた。

美波「プロデューサーさんはまだお仕事やってるのかな・・・さすがにないよね」

お疲れ様メールを送ろうと思ったけど、アドレスを知らなかった・・・

美波「今度聞いておこっと」

今日は疲れたし、もう寝よう。

おやすみなさいと呟いて、部屋の電気を消した。

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:42:01.45 ID:vT4XWxmG0
P「今日は初めてのビジュアルレッスンだ!」

は~い

P「まぁ初めてでわからないこともあると思うだろうけど、そこはトレーナーさんの仕事さ」

美波「今日もプロデューサーさんは外周りですか?」

P「あぁいや、今日は美波について回るぞ」

私について回るって・・・

P「じゃあ出発だー、おー!」

美波「お、おー」

なんだかやけにテンションが高い気がするけど、いつもこんなんだったかな。

トレーナー「今日貴方のレッスン担当です、よろしくね」

美波「よ、よろしくお願いします」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:44:27.73 ID:vT4XWxmG0
あれ、この人どこかで・・・

トレーナー「いつも、妹がお世話になってるわ」

あぁ!あのダンスのトレーナーさんか!確かにどこか似てるなぁとは思ってたけど。

美波「こちらこそ、いつもお世話になってます!」

トレーナー「じゃあ早速始めていきましょうか」

美波「はい!」

とにもかくにもレッスンが始まった。

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:49:36.55 ID:vT4XWxmG0
ただ一つ気になるのが・・・

P「」ジーッ

・・・・・・。

P「」ジーッ

美波「どうしてプロデューサーさんはずっと私のことみてくるんですか?」

P「!!」

P「そ、それはだな、美波の新しい一面を発見できるんじゃないかと思ってな」

P「それにアイドルをみるのはプロデューサーとして当然さ!」

美波「そうですか・・・」

でもなんだか人にそうじっと見られてると、少し恥かしいかな。

やっぱり、こうやってポーズをとる姿はちょっと・・・。

うぅ、集中集中!これもアイドルになったら当然のことだもん!

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:53:11.25 ID:vT4XWxmG0
トレーナー「お疲れさま、今日は終わりよ」

美波「ありがとうございました!」

P「お疲れ様美波、なんだか今日は元気だな」

美波「えぇ、やっぱりダンスレッスンに慣れてきたのも大きいんでしょうね」

美波「スポーツは好きですが、少し違うんですよね」

美波「こう、大きく回ったりとか、普段と違う力が必要だったり」

P「大きく回ったり・・・そうか、ダンスレッスンも見ものだな・・・」

プロデューサーさんがなにやら呟いてたけど、なにを言ってたのか聞こえなかった。

きっと今後の方針のことだろう。

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:58:10.58 ID:vT4XWxmG0
この事務所では毎回レッスンの後に事務所に戻るようにしているみたいで、直帰はあまりしたことがない。

P「戻りました~」

ちひろ「お帰りなさいプロデューサーさん、美波ちゃん」

美波「ただいまちひろさん」

事務員でちょくちょく雑用なんかもしているちひろさん。

この人も綺麗で、アイドルだっていわれても不思議じゃない。

なんだかトレーナーさんといいそういう人が多いなぁ。

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 16:59:55.35 ID:vT4XWxmG0
P「じゃ、今日はこれで終わりだな、お疲れ様」

帰り道に小腹が空いてしまったので、コンビニによることにした。

新しいお菓子がないかと探してるところに目に入ってきたものがあった。

美波「へー、アイドルってこういうのもやるのかぁ」

グラビア誌だった。

皆可愛かったり、キレイな人ばかりだった。

水着姿を多数の人に見られることを考えると、恥ずかしくなってきたので飲み物とトッポだけ買って帰った。

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:02:26.05 ID:vT4XWxmG0
今日は学校の帰りに寄る日、そしてヴォーカルレッスンの日らしい。

事務所に入るとプロデューサーさんが机に突っ伏していた。

美波「だ、大丈夫?」

P「・・・ん、あ。美波か、おはよう」

おはようって、もう16時なんですけども。

まさか、もしかして・・・。

P「今日はヴォーカルレッスンの日だな!」

・・・・・・。

P「じゃあ早速向かおう」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:05:55.30 ID:vT4XWxmG0
なんだろう。

トレーナー「今日はよろしく」

もしかするともしかする。

美波「あの、失礼ですけどダンスとビジュアルのトレーナーさんとはご親戚で?」

トレーナー「えぇ、二人とも私の妹よ」

あぁ~やっぱり、雰囲気は少し違うけど見た目が似てる。

そしてやっぱり綺麗。

トレーナー「じゃあ始めましょうか」

美波「よろしくお願いします!」

レッスン中、プロデューサーさんはちょっと難しい顔をしていた。

トレーナー「おつかれ、あまりムリな歌い方はしちゃだめよ」

美波「はい、ありがとうございまじた」

P「お疲れ様、美波の声は静かで綺麗だな。なんとなく楽曲の方針が決まったよ」

少しずつでも、着実に前に進んでる気がする。

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:09:24.79 ID:vT4XWxmG0
明くる日、今日はラクロスもオフだったので、久しぶりの何もない休日を楽しむことにした。

それとなく本屋に向かっていた最中、プロデューサーさんを見つけた。

なんだかこうやって見かけるのは初めてで、嬉しくなってきたので後ろから思いっきり挨拶をした。

美波「おはようございますプロデューサーさん!!」

P「んお、美波か。おはよう」

なんだか少しやつれてるような感じがするけど・・・

美波「大丈夫ですか?」

P「大丈夫、ちゃんと仕事してるさ」

美波「そうじゃなくてですね・・・なんだか少し疲れてるようにみえます、きちんと休んでくださいね?」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:14:09.21 ID:vT4XWxmG0
P「担当アイドルに心配されるなんてな・・・Pよ、落ちぶれたものだな」

美波「わかりました?」

P「は、はい・・・」

すぐ冗談めかすんだから・・・。

美波「仕事って、営業ですか?」

P「まぁそんなところだな。ところで美波はなにやってるんだ?」

美波「私はちょっと本屋に向かうところです」

P「そうか、それじゃまぁしっかり休んでな」

美波「それはあなたもです」

任せろ!とかなんとかいいながら行ってしまった。

まったくもう。

あれ?でもこの辺って民家多くてあったとしても病院ぐらいしかないけど・・・

美波「(むむ!のんびり歩きすぎたかな?早く行って帰って再放送のドラマみなきゃ!)」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:16:11.27 ID:vT4XWxmG0
アイドル候補生として約2ヶ月が過ぎたころ、プロデューサーさんから一報が入ってきた。

P「よし、次の仕事グラビア誌の仕事が決まったぞ!!」

えっ

美波「ぐ、グラビアですか?うーん」

P「どうした、嬉しくないのか?きちんとしたアイドルの仕事だ」

美波「嬉しくないわけじゃないんですが・・・」

なんだか恥ずかしい、かな。

P「きっとこのデビューをきっかけに、もっと仕事増えてくるだろうからさ!

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:18:12.03 ID:vT4XWxmG0
カメラマン「はいもっとニッコリ笑って~」パシャパシャ

美波「は、はい!」

カメラマン「そう固くならずに。美波ちゃんはなにか趣味とかってある?」

美波「趣味、ですか。ラクロスならやってます」

カメラマン「ラクロスか、好きかい?」

美波「大好きです!スポーツは基本好きですが、ラクロスはもう一番!」

カメラマン「ん~いーね、その笑顔もっと頂戴」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:22:59.45 ID:vT4XWxmG0
P「初のお仕事お疲れ様、美波」

結局のせられてしまった。

うぅぅ。

美波「やっぱり恥ずかしかったです・・・」

P「ん、でも可愛かったぞ」

美波「そ、そうですか」

この人はすぐにこっちも恥ずかしくなることを言う。

勿論、担当アイドルだからというのもあるんだろうけど、素っぽい感じがしてならない。

P「とりあえず、衣装の方針もそれとなく決まったよ」

今日水着しかきてませんよ・・・トホホ

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:23:29.59 ID:vT4XWxmG0
P「でもホントにラクロス好きなんだな、今日もその話題がでてからスムーズだったし」

美波「えぇ!まぁ最近は毎日とまではいきませんが、アイドル活動もいいかなって思えてきました!」

P「そっか、それなら良かったよ」

それも、あなたのおかげなんです。本当に感謝してます。

P「じゃあ今日はデビュー記念ということで、俺のオススメのレストランに行こうか。いいもの見れたし」

美波「良い物見れたしって・・・」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:35:05.75 ID:vT4XWxmG0
それからというもの、ちょっとずつ色々な仕事がくるようになった。

雑誌からCMまで。ネット上のCMだけども。

美波「本当にプロデューサーさんのいうとおりになりましたね」

P「・・・だろう?まぁこれが俺の仕事だからな・・・」

いつもより元気がない。もっと乗ってくるはずなのに。

P「今日は、営業だったな。さぁ行こうか」

彼が椅子から立とうとした次の瞬間、思いっきり転げ落ちた。

美波「だ、大丈夫ですか!?」

ちひろ「どうしました?」

美波「ぷ、プロデューサーさんが思いっきり・・・」

P「大丈夫ですよ、ちょっとクラっとしただけですから」

そう言って笑う彼は、とても苦しそうにしていた。

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:38:30.42 ID:vT4XWxmG0
ちひろ「とりあえず病院に向かってください」

P「で、でも」

ちひろ「先方には私が連絡しておきますので、しっかりと見てきてもらってください」

ちひろ「美波ちゃんは、プロデューサーさんに付き添ってあげてくださいね?」

営業先のことはちひろさんにまかせて、私たちはとにかく病院へ向かった。

P「ただの疲労だってさ」

笑いながら病室のベッドに横たわるプロデューサーを見てると、涙がこみ上げてきた。

P「み、美波・・・」

美波「バカ・・・」

P「ごめんなさい」

静かにときが流れる

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:41:50.73 ID:vT4XWxmG0
美波「とにかく!これからはもっと自分の身体もいたわってください。わかりました?」

P「は、はい」

この人はいつも口だけなんだから・・・。

でも、本当によかった。

美波「とりあえず今日は休むとして、ちひろさんに感謝の意もこめて今度ご馳走してください」

P「えらいこっちゃ」

きいたところによればプロデューサーさんは大体最後まで残っていて、朝早くに来ていたみたいだった。

それが私のためだと思うと、なんだか申し訳ない気もしてきてしまった。

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:45:07.21 ID:vT4XWxmG0
翌日からは平日の時は私が上がるのと同時に上がるように事務所からも言われてしまったみたい。

まぁこれで無茶をしないと思えば・・・。

P「やったー!やったよ美波!」

この元気っぷりなら無用な心配かもしれないけど

美波「どうしたんですか?凄い嬉そうですね」

すごく、嬉しそうな子供みたい。

P「やっと完成したんだよ!!」

主語がない、子供みたい。

美波「なにが完成したんです?」

P「美波の歌だよ!!」

う、そ・・・。

驚きのあまり固まってしまって何もいえなかった。

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:50:10.24 ID:vT4XWxmG0
P「ねぇねぇ、今どんな気持ち?今どんな気持ち?」

美波「なんというか、まだ実感が・・・持てなくて、その」

そうだろうそうだろうと頷く彼を見ていると、なんだか微笑ましい気持ちになってきた。

P「まずは楽譜渡すから、メロディだけでも聞いてみてくれよ」

P「ずっと考えてきたんだ、出来栄えは保障するよ」

美波「でも、それで倒れてもらっちゃこまりますからね?」

P「ん、そうだな」

美波「破ったりしたら、私四六時中そばにいますから」

P「それもありかもな」

え?

P「冗談はおいといて、早速聴きに行こう」

・・・彼の一言一言には、いつもドキりとしてしまう。

担当アイドルとしては疲れることこのうえない。

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:54:16.27 ID:vT4XWxmG0
この事務所にあるこじんまりとした防音室に、一つのメロディが流れる。

とても静かで、それでいて活気のある、癒される曲調

ここにこの歌詞がのると思うと、一体どんな歌になるのか今から楽しみだった。

美波「私、歌えるでしょうか・・・」

P「大丈夫、美波なら。きっと、似合うと思うから」

うん、なんだかそんな気がしてきた。

美波「プロデューサーさん?」

P「どうした?」

美波「ありがと」

P「ん」

もう少し、二人きりで、この曲を聴いていた。

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 17:59:14.16 ID:vT4XWxmG0
約一ヶ月、ヴォーカル練習に新曲をいれながらレッスンの日々を過ごしていた。

P「美波、ライブの日程が決まったよ」

美波「え?」

P「一ヶ月後に新人アイドルが集まってやるライブ大会なんだがな、まぁそれなりの規模でさ」

P「1:1のライブ対決が行われて、盛り上がったほうに投票していただくという方法で上位を目指す」

美波「ちょ、ちょっちょっとまってください、何を言ってるんですか?」

なんだかプロデューサーさんはそわそわして先走っているようにも感じた。

P「ん?だからライブだよ、ライブ」

美波「私今までなんにもやってきませんでしたよ?」

そう、今までライブなんて一度もやってこなかった。

仕事はそれなりにこなしてきたし、レッスンだってきちんとやってきた。

しかし、それといって実践を踏むということ以上に大事なことは無い。

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:02:13.15 ID:vT4XWxmG0
P「そうだな。・・・今抑えられるなかで一番の大会だと思う」

P「だからこそそこでライブを行って欲しいんだ」

いきなりで申し訳ないんだけどな、と彼は付け加えた。

P「シンデレラガールズという名目なんだがなんだが、D以下の新人アイドル達が集まって行われるんだ」

P「初めてにしては大きな大会だけど、これで優勝すれば一躍有名になれる」

P「何より慣れるというのが大事だしな」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:05:12.07 ID:vT4XWxmG0
P「んでこれが衣装」

・・・え?

美波「これ、ですか?」

P「あぁ、これだ。なんで不思議そうな顔するの?」

だってこれ・・・

美波「衣装というか、水着じゃないですか・・・」

P「まぁいいようだな」

いいようって言うかもうまんま水着ですよ、これ。

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:08:18.79 ID:vT4XWxmG0
P「でもほら、パンツのほうはそうでもないし、上着だってあるし」

美波「そ、そうですかね・・・」

P「うん大丈夫ほら、とりあえず着てみたら?」

ん~、乗せられていく。

美波「もうワンポイント欲しいですね。ネックレスみたいなのを」

P「う~んそっか、考えておくよ」

P「で、ライブのほうはどう?」

美波「いい機会だとは思いますし、やらせていただきます」

それでも、やっぱり不安だった。

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:11:33.75 ID:vT4XWxmG0
一ヶ月というものは経ってしまえば早かった。

美波「うぅ、緊張する~」

P「み、美波ならだだ大丈夫だよ!」

そういってちょっと呂律の回ってないプロデューサーをみると、思わずふふと笑ってしまった。

P「な、なんだよ・・・」

美波「なんでもないよ」

少し不安が残る。ううん、少しどころじゃない、かなり不安。

でもプロデューサーに頼ってばかりじゃいられない。

だってこれは私のライブだから。

恩返しを、したいから。

ライブハウスに入って、ステージの上にたち少しのリハをする。

やれる、私なら。そう言い聞かせることしかできなかった。

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:16:05.57 ID:vT4XWxmG0
ライブが始まって、すぐに私の出番が回ってきた。

相手はDランク、それなりの場数は踏んできているはずだ。

堂々としてるし、ダンスも歌もしっかりとしている。

そんな彼女に、私は勝てるのだろうか・・・。

私の名前が呼ばれてしまった。心臓がいっきに跳ね上がる。

プロデューサーさんと目を合わせる。きっと彼も緊張はしているだろう。

でも、彼とはなにも話さない、余計な心配をさせてしまいそうだし。

お客さんの前にたつ、と同時に緊張が最高潮に達する。

曲が始まる、頭が空っぽになって歌詞が飛ぶ。

ダンスはやっとこさできている、という程度。歌詞も口から好き勝手に流れてきている。

ライブを行っている、という実感があまりない。

呼吸が辛くなってきた、息がつまって足がもつれそうになる。

いつの間にか、私の初ライブが終わった。

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:21:23.25 ID:vT4XWxmG0
するとプロデューサーさんは少し道を逸らして、車を止めた。

P「なぁ美波、美波って、お姉ちゃんなんだよな?」

美波「え?う、うん」

なんだろう急に

P「たぶん、俺はそのしっかりしている美波の性格に頼りきっていたと思う。いや、頼りきってたよな」

P「俺1人じゃ、まともにできないし、支えてやれない」

P「美波には、辛い思いをさせてた」

美波「そんなこと」

P「無いなんてわけがない、現に今だってそうだ」

P「悔しいだろ、辛いだろ、そんなことないわけないだろ」

P「でも美波は、しっかりしなきゃって思ってる。俺がこんなんだから」

P「だから美波はそんな気持ちを押し込めて、ムリしてる。無理して笑う」

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:25:31.55 ID:vT4XWxmG0
そうかもしれない、そういうところがあったかもしれない。

P「でもな美波、そうじゃなくていい。そんなムリに頑張らなくていいんだ」

P「少なくとも、俺といるときは、無理しなくていい」

彼の言葉に、自然と涙が出てくる。

悔しい、悔しくないわけない。

美波「わ、たし・・・凄く・・・」

そっと抱きしめられた。

涙が溢れ出す。もう抑えることなんてできない。

私の嗚咽だけが、車の中に響いていた。

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:28:30.34 ID:vT4XWxmG0
P「少し、落ち着いたか?」

美波「はい・・・ごめんなさい」

P「いや、まぁ俺もな・・・でもさ、今度から少しは頼ってくれよな」

美波「えぇ、でも、やっぱりプロデューサーさんは少し頼りないですし、私がしっかりしなきゃいけません」

P「面目ないです・・・」

そう言って笑う。

心がホッとする、私が癒される場所。

そうきっとこの気持ちは・・・

P「絶対」

美波「はい?」

P「なろうな、アイドルマスター」

美波「はい」

今はまだ、考えないでいよう。

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:34:10.91 ID:vT4XWxmG0
ライブが終わってからはや2週間、お仕事は今までどおりだったが、ライブは行わなかった。

ダンスの振り付けが終わってから事務所に戻ると、プロデューサーが話しかけてきた。

P「なぁ美波、あの場所にいかないか?」

美波「あの場所?」

どうしたんだろう突然、それになんだか・・・

P「うん、ほらあの初めてあった場所」

美波「夕日の見える丘ベンチ!」

P「え?」

おっと、思わず口にだしてしまった。

P「くっ、ははっ」

美波「もう!笑わないでくださいよ!」

P「だ、だって・・・」

むぅ~、そんなに変だったかなぁ。

もしかしたら私ネーミングセンスないのかも・・・

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:37:00.94 ID:vT4XWxmG0
車を階段脇に止めて出た。

時間は丁度、であったころと同じ時間帯になっていた。

美波「少し、日が伸びましたね・・・」

P「そうだな」

今思い返すと、あっという間だった。

美波「そうだ!いい事思いつきました!」

P「ん?」

美波「この階段って100段あるんですけどね?一段一段、お互いに質問していきましょうよ!」

P「ん~」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:42:08.45 ID:vT4XWxmG0
悩んでるプロデューサーをよそに、早速スタート!

美波「じゃあまず0段目!これからもよろしくお願いしますね?」

P「0段目とか卑怯じゃないか・・・しかもそれって質問になってるか?」

おっちょこちょいだな、といって茶化す。

美波「い、いいじゃないですか!自由の権利です!」

P「こういうときに使うもんかね」

P「まぁそうだな、当たり前だよ」

P「俺はこれからも、プロデューサーとしてやっていくよ。ずっと、美波の側にいるよ」

美波「約束ですよ?」

P「うん、約束する」

うん、良かった。ほっとした。

これからも、ずっと側にいてくれるって思うだけで

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:46:18.57 ID:vT4XWxmG0
P「じゃあ次は俺の質問だな。一段目は、これからもよろしくお願いします」

美波「ぷ、プロデューサーだって質問になってないじゃないですか」

そうだな、といって笑う

美波「こちらこそよろしくお願いします」

美波「次私ですね、これからしたいことってありますか?」

プロデューサーは少し悩んでる。

美波「仕事抜きで」

この人のことだからどうせ仕事関係が入ってくるだろうし

P「うぇっ」

案の定唸った。まったくもう

P「そ、そうだな。ん~、腹、減ったかな」

美波「ふふっ、じゃあ後で連れてってください」

いつかは、手料理をご馳走したいな

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 18:53:29.83 ID:vT4XWxmG0
P「美波は、これからどうしたい?」

一緒にいたい。

その言葉が、瞬時に浮かんだ

プロデューサーとアイドルというものではなく、二人の人間として、ずっと。

好きです、って・・・

でもこんな言葉、言えるわけがない。

P「美波?」

美波「へ?」

P「なんかやけに難しい顔になってたからさ」

思いっきり顔に出てしまっていたのか。

そうだ、これは最後の100段目に残しておこう。

それまでに、心の準備をしなくちゃ。

けれどプロデューサーは、私の100段目の質問に答える前に、いなくなってしまった。

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:00:45.04 ID:vT4XWxmG0
病院の一室で、ちひろさんが先生から聞いた話をきかせてくれる

ちひろ「癌、だったみたいで・・・」

そんな事、今まで聞いたことない。

美波「だって!普通に・・・直、前まで」

声が上ずってうまく喋れない

美波「なんでよ!なんでプロデューサーさんが・・・なんで!!」

思わずちひろさんに怒鳴ってしまう。彼女が悪いわけじゃない、むしろ悲しいはずだ。

それでも彼女は泣かない、私以上にしっかりとしている。

だからそんな彼女を頼ってしまう。だからそんな彼女にあたってしまう。

この悲しみがどうなるというわけでもないのに。

こんな私が情けなくなって、この場から逃げ出してしまう。

もういっそ、こんな世界からも逃げ出したかった。

何もかも捨てて、何もないところに・・・。

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:06:15.84 ID:vT4XWxmG0
美波「・・・・・・」

暗い部屋で、灯りも点けずにベッドの上でただじっとしていた。

プロデューサーのあの日の言葉を思いだす。

(「側にいるよ」)

美波「嘘つき・・・」

すぐに約束を破った。大嘘つき。

絶対に許さない、いくら謝ったって許してあげない。

何かをする気にはなれない、アイドルすらも辞めてしまおうかと考えている。

最初は違ったけど、いつからかあの人に会える、という気持ちが心のどこかにはあったかもしれない。

もう会えない、そう思っただけで、また悲しみがこみ上げてきた。

けれど涙は出てこない、悲しいはずなのに。

何も考えないように、瞼を閉じると、すぐに眠りに堕ちた。

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:10:15.73 ID:vT4XWxmG0
ノックの音で目が覚める。

「美波ちゃん?」

トビラの向こうから、ちひろさんの声が聞こえた。

ちひろ「入るね?」

プロデューサーさんが死んでからの一週間、事務所にはまったく顔をだしていない

たぶん、心配して家にきてくれたのだろう。

美波「・・・・・・」

ちひろ「美波ちゃん・・・」

ああそうだ、とちひろさんはムリに明るい声をだして言った。

ちひろ「今日はね、渡したいものがあってきたの」

渡したいもの?なんだろう

そう言って渡されたのは、小包とシンプルな手紙。

ちひろ「その、たまには、顔だしていってね?皆待ってるから」

ちひろさんが帰っていった後に、私は手紙を読んだ。

プロデューサーさんからだった。

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:13:18.84 ID:vT4XWxmG0
──美波へ

──この手紙を読んでるころには、俺はもう・・・なんてな。

──なんだか死ぬ前から死んだときの手紙書くなんて不思議な気持ちだよ。

──まず最初に、謝っておかなくちゃならないよな、ごめん。

──もう前々から、癌だったってことはわかってたんだ。

──でも、気づいたころにはもう随分と進行してしまってて治せない状態だった。

──美波には、言えるわけもなかった。本当にごめん。

ずるい、ずるいよ。手紙に怒ったって意味ないじゃん・・・

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:15:11.36 ID:vT4XWxmG0
──そしてありがとう、本当に感謝してる。

──感謝してもしきれないぐらいだ。いつも美波には支えられてきた。

──プロデューサーとしては、失格だったよな。

──時々俺のことを叱ってくれる美波は、なんだかお姉ちゃんぽかったよ。

お姉ちゃんぽいって、もぉ。

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:16:29.92 ID:vT4XWxmG0
──しっかり者の美波に、ちょっと頼りすぎてたかな。

──こんな俺でごめん。

──なんだか謝ってばっかだよな、ホントだめだな。

そんなことない。なにより、私を理解してくれていた・・・

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:20:34.50 ID:vT4XWxmG0
──心残りもある、それはやっぱり、美波をトップアイドルにしてやれなかった。

──それだけが唯一の心残りで、悔やんでも悔やみきれないかな。

──もっともっと、美波には新しいことをやらせてあげたかった。

──もっとずっと美波の隣で、美波を支えていきたかった・・・。

──代わりといってはなんだけど、俺からのプレゼントがあるんだ。

──小包をあけてみて欲しい。

梱包をやぶって、蓋をあけると、ラクロススティックの網のシンプルなシルバーネックレスが入っていた。

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:23:25.41 ID:vT4XWxmG0
──俺ってそういうのセンスがないから、似合うといいんだけど・・・

──これで完成だな、衣装。

──なんだかこう物思いにふけってると昔を思い出すよ、出会った時から、今までのこと。

──最初にあった頃のこと、覚えてる?

勿論、覚えてるよ。最初は少し変な人だなぁって思ってたり思ってなかったり。

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:26:26.36 ID:vT4XWxmG0
──なんだろうな、このとき美波に会えて、俺はまだやれるって、また元気が出てきたんだ

──プロデューサーは、女の子を変えるっていうけど、俺が美波に変えられちゃったな。

──・・・美波に会えてよかった。

──美波がアイドルで本当に良かった。

──今まで、ありがとう

美波「私も、貴方に会えて・・・本当に・・・よかった・・・」

美波「・・・ありがとう・・・」

枯れていたと思ってた涙が、またとめどなくあふれ出してきた。

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:29:33.13 ID:vT4XWxmG0
手紙を受け取ってから二日後、私は事務所に顔をだした。

最初は少し不安だったけれど、社長もちひろさんも、皆笑顔で出迎えてくれた。

後任のプロデューサーが中々見つからないらしく、ちひろさんがメインでプロデューサーとしての仕事をしてくれた。

他のプロデューサーも合間合間に段取りをしていてくれてたみたい。

本当に頭があがらない・・・

それからすぐに、一週間後のライブも決まった。

このライブで一区切りをつけようと思う。プロデューサーさんと過ごした今までと・・・

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/23(土) 19:30:59.92 ID:DFRC/XWG0
新田ちゃんうきゃー!!
早くRになってください

引用元: 美波「アイドルマスター」