1: ◆8dLnQgHb2qlg 2015/10/17(土) 19:09:25.92 ID:s8y/1pvy0
「杏ちゃん! まって! まってよ!」
「ん? ごめんね、きらり」
道を歩く小さな子供達を眺めていて、これは夢なんだと気づいた。
「杏ちゃんは速すぎだよ!」
「あー、気づかなかったよ。次から気をつける」
私がまだ北海道にいた頃。
まだうさぎのぬいぐるみが綺麗だった頃。
「お願いだよ? 杏ちゃんはほんとうに……あっ」
「どうしたのきらり? ……あれって、アイドル?」
うさぎを抱いた女の子と、鞄や服にかわいい飾りを少しだけつけた女の子がビルのモニターを見上げた。
「ふーん、まぁいいんじゃない? でも疲れそう」
「またそんな事言って。ダメだよ?」
「はいはい、わかったよ。きらりはアイドルが好きなの?」
偉そうな物言いに笑ってしまう。
あの頃の私は自分が天才だと本気で思っていて、事実運動でも勉強でも負けたことはなかったけど、所詮は十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人。
早々に並ばれ、追い抜かれ、いつしか追いかけることも嫌になるくらいの差ができていた。
残った才能は頭の回転だけ。結局、やればできるのにやらない子って言われるようになったっけ。
「だって、とってもかわいいんだよ!」
「……へぇ。確かに、きらりがそこまで言うからにはいいものかもね」
「ふふふ、今度いっぱい見せてあげる」
「え、それは……はぁ、わかったから。今度ね」
「えへへ、ありがと!」
これは本当に小さかった頃の、昔の話。
私の隣で笑ってたこの子は、今はどうしているんだろうか。
……………
………
…
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【菜々「怠け者のお姫様」】の続きを読む