1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:12:31.78 ID:P2gDfZn90
P 「おーい千早ー。今日のスケジュール聞いてるかー?千早ー?」

小鳥「あ、プロデューサーさん。千早ちゃんならソファーでうつらうつらしてましたよ」

P 「そうですか。珍しいな。それだけ疲れてたって事か」

小鳥「まぁ、今お仕事ぎっちりですからねぇ」

P 「千早には悪いけど、スケジュールだけは確認しとかないと。ええと……千早ー?すっぽり毛布に包まっちゃってまぁ」

小鳥「寒かったですかね。……あれ?千早ちゃんってこんなに体大きかったかしら」

P 「起きろー千早ー。スケジュール確認するぞー」バサッ

千早「グルル……」

P 「」

小鳥「」

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:13:06.13 ID:P2gDfZn90
小鳥「えっ、えっ?」

P 「これ、猫ですかね」

小鳥「いや、猫はこのサイズになりませんよ!?」

P 「じゃあ……」

春香「おはようございまーす!あれ?どうしたんですか二人とも?」

P 「ああ、おはよう春香」

小鳥「春香ちゃん、おはよう」

春香「あ、はい、おはようございます。ソファー囲んで何か……」

春香「」

P 「どう思う」

春香「プ、プロデューサーさん!虎ですよ、虎!」

小鳥「けど虎ってもっとこう、牙が短いんじゃないかしら」

P 「あ、俺これに似たの昔図鑑で見たことあるな」

春香「なんなんですか、この子」

P 「牙が長いヤツ……サーベルタイガーだっけ。絶滅したヤツに似てる」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:16:58.80 ID:P2gDfZn90
小鳥「検索したら出ました。確かにそっくりですね」

春香「あの……それってやっぱり……」

小鳥「……肉食よ」

春香「プロデューサーさん!離れて!逃げましょう!」

千早「ウー……グルルル……」

P 「いや、でも千早だし……」

小鳥「いや!朝来た時は間違いなく人間の形でしたし!別人……別虎?別猫?ですよ!」

P 「千早だよな?な?」

千早「ニャン」ゴロゴロ

P 「千早だよ、ほら」

春香「千早ちゃんだった……」

小鳥「な、なんだ千早ちゃんだったのね……おどかさないでよ……」

P 「千早、今日はオーディション入ってるから、その格好も飽きたら元に戻ってくれよ」

春香「千早ちゃんも疲れてたんですよね、きっと。虎になるくらい」

小鳥「そうね……きっとそうよね……」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:20:34.69 ID:P2gDfZn90
その頃。

千早(見たことも聞いたことも無い状況に来てしまったようだわ)

千早(事務所でうつらうつらしていて、気が付いたら雪景色で、しかも……)

兵士「うぉおおおおおお!」

兵士「げほっ!ぐ、ぅぅ……ウーランツァール……!」

虎「グォオオオオオオオオ!!」

千早(明らかに戦争中。しかも見たことのない生き物までいる)

千早(私は一体、どこに来てしまったの?)

?「糞、こんな時にどこへ……千早?そこにいるのか?」

千早「あ、はい」

千早(あ……思わず返事をしてしまったけれど、多分千早というのは私ではなく誰か別の……)

?「はい……?千早?」ガサガサ

千早(そういえば隠れていたのだったわ。ただ、今の男の人、声が少しプロデューサーに似ていてつい)

?「……君は、誰だ?見ての通りここは戦場だが」

千早「え、あの……如月千早って言うんですけど、本当に知らないんですか?」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:23:24.04 ID:P2gDfZn90
千早「それが、私にもわからなくて……出来れば、安全な所まで案内して欲しいのですけれど」

?「厄介な……この忙しい時に。如月殿。自分は新城直衛大尉である。君さえ良ければ君を保護し、なんとかこの場を脱する機会を与えようと思うのだがどうか?」

千早「私が良ければ?勿論、お願いしたいです。けど、大丈夫なんですか?だって……」

千早(どう見ても、負け戦よね……これ)

新城「君一人くらいどうとでもなる。わかったらさっさと立って出てきてくれ。そこで座ったまま孤立する気で無ければね」

千早「あ、は、はい」スクッ!

新城「……なにしろこれから戦争ですので」

猪口「大隊長殿、どうかしたんですかな?」

新城「どうもこうもないだろう。とんでもない拾い物だ」

猪口「は?拾い物……おや、千早ではないですか。やはり帰ってきたようで」

新城「ん?」

千早「えっと、まぁ千早は千早ですけど……」

新城「待て、曹長。君にはこれが猫に見えるのか?」

猪口「はぁ、まぁ。あ、そういえば耳が……」

新城「耳以外にもあるだろう」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:26:29.43 ID:P2gDfZn90
新城(どういう事だ、君、何かしたのか?)ボソボソ

千早(し、知りませんよ!私にも何がなんだか……)コショコショ

新城「君」

兵士「はい、大隊長殿!」

新城「僕の猫は以前からこうだったか?」

兵士「は……?自分は剣虎兵では無いので個体差は分かり兼ねますが、このような御姿であったと……」

新城「引き止めてすまなかった。作業に戻ってくれ」

兵士「はっ!」

千早(この人が隊長なのね……小さいのに)

新城「猪口曹長。僕は少し下がる。何かあったら報告するように」

猪口「は?は、はい。作業は工兵共にまかせておけば問題ないと思いますから、如何様にも」

新城「頼んだ。さて……」

千早「……あの」

新城「どうやら君は僕の猫の代わりに現れたようだ」

千早「猫?というと、あの大きな虎ですか?」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:30:09.97 ID:P2gDfZn90
新城「剣牙虎……サーベルタイガーという。僕らはそれを従える兵で剣虎兵。それも知らないのか?」

千早「え、ええ……ごめんなさい」

新城「まぁいい。君だけを撤退させようと思ったがそうもいかなくなった。君は僕以外には僕の猫として認識されるようだ」

千早「ええ!?」

新城「であるからには、僕と共に前線を駆けてもらう必要が出る」

千早「でも、隊長なら自ら前線に立つなんてことは……」

新城「君、目か頭が悪いのか?この戦は負け戦だ。僕らは敗残兵で、戦場を綺麗に片付けて行かなければならない。隊長と言えど、出し惜しみ出来る兵力は無い」

千早(確かに、明らかに数が違ったわ……勢いも向こうのほうがすごかった。じゃあ、私は……私は……)ガクガク

新城「どうした、今更震えが来たか?死体を見てもなんとも無かったのに」

千早「きゅ、急に現実味が出てきて。私もああ○るんだと思うと……うっ」

新城「吐くならどこか茂みの方に頼む。見ながら会話したい気分でもない」

千早(どうして私がこんな目に?何故?私が何をしたっていうの?)ゲボッゲホッ

新城「楽になったか?これからもっと酷くなる。そしてそれを最前線で見るわけだ。吐く体力がある内に出しきってしまうといい」

千早「っは、はぁ……うっ……もう、大丈夫です。けど、私だけでも何とか逃げられないでしょうか」

新城「無理だな。剣牙虎は僕らの大事な戦力だ。自分の猫だけ逃したとなれば隊内での信頼は失われる。例え家族のような猫であっても」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:34:47.51 ID:P2gDfZn90
千早「うぅ……また吐きそうだわ」

新城「そうだ。以前作ったアレがあったな。猪口も耳がどうとか言っていたし……」ゴソゴソ

千早「何か安全になる物でも?」

新城「これだ」

千早(ね、猫耳帽!)

新城「かぶっておけ。そうすれば違和感も感じられないだろう」

千早「何故私がこんな……どうして……」ブツブツ

新城「指揮官が後方で引き篭っているわけにもいかない。そろそろ戻るか。おいで、千早」

千早「……くっ」

猪口「おや、千早の耳がいつもどおりに」

新城「そこに疑問はないのか、曹長」

猪口「は?いえ、特には……」

新城「……まぁ、いい。作業の進捗は」

猪口「昼前には終わるでしょうな。大隊長殿ご提案の馬鋤を使っての作業が実に捗ったようで」

新城「そうか。思いつきの割りには良い成果をあげたようだな。ならば千早は昼まで休ませておくか」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:37:39.09 ID:P2gDfZn90
千早(あ、一応気はつかってくれてるみたいね)

新城「千早。天幕の方に行っておけ。多分、漆原達がいると思うが、あまりじゃれつかないように」

猪口「はっは、大尉は千早と仲が良いですなぁ」

新城「……そうだな」

千早「ここね。良かった、少しは温かいわ」ガサ

千早(……誰もいない。好都合だわ。少し考え事がしたかったし)

千早(なんでこうなったのかしら。戦争だなんて……私はアイドルをやっていたはずなのに。アイドルとして、ようやく軌道に……)

千早(歌姫、なんて呼ばれて、仕事もどんどん増えて、歌もいっぱい歌って。疲れはしたけど、充実して……)

千早「いや、嘘ね……」

千早(正直、マンネリというか、悩んでいたわね。望んでそうなったはずなのに、何か……物足りないというか。つまらなく感じてたわ)

千早(だからといって今の状況を望んだわけではないけれど。刺激というには余りにも刺激的すぎるでしょう)

千早「うっ……思い出したらまた……」

?「あーしんど。負け戦は辛いねー」

千早「あ……人かしら。じっとしておこう」

妹尾「まだ負けと決まったわけじゃありませんよ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:40:38.59 ID:P2gDfZn90
兵藤「いーや負けだろ。負けも負け、大敗だろうが」

妹尾「確かに負けましたが、内地での反撃次第ではまだまだ戦えます」

兵藤「その時まで生きてりゃいいがね。ま、お前に愚痴っても始まらねえか」

漆原「……千早か。おいで」

千早(……じゃれつくなとは言われたけれど、呼ばれて近付かないのも変よね)スッ

漆原「よしよし……お前の御主人は凄い人だな。だけど俺にはついていけないよ」

兵藤「おいおい、聞いちゃったぜ。隊長批判かよ」

妹尾「……確かに、理解に苦しむ人ではありますが。それも全て護国……いえ、我々兵隊を救う為の事でしょう」

漆原「それはわかってる。だけど、だからって衆民を、村を犠牲にしていいのか?」

兵藤「まーだ納得してなかったのかよ」

千早(隊長っていうのは、新城大尉よね。村を犠牲に……?)

妹尾「少なくとも、被害は最小に抑えているじゃないですか」

漆原「わかってる、わかってるんだ。だけど……この北国で、雪風に晒されながら必死で開拓した村を焼かれ、井戸に毒を入れられる。そんなの……」

千早「なんですって……!?」ガタッ

漆原「うわっ、どうしたんだ千早」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:44:04.22 ID:P2gDfZn90
兵藤「あーあ、大尉の事悪く言うから怒ったんじゃねえの?」

漆原「まさか、そんなわけ……」

千早「……」ダッ

漆原「うわあ!」

妹尾「あの、走って出ていきましたよ」

兵藤「ぶっははははは!」

漆原「……」

千早「新城大尉!」

新城「……なんだ。君には休んでおけと言ったはずだが?」

千早「休んでなんかいられません。今聞きましたが、あなたは村を焼いて井戸に毒を投げこむよう命令したんですか?」

新城「そうだが、それが?」

千早「戦争に勝つ為ですか?その為に、そんな酷い事を」

新城「酷い?……君は見てもいないのにそんなふうな事を言うのか」

千早「でも、私にだって想像はつきます。戦争に勝つためなら何をしたっていいんですか?」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:47:43.03 ID:P2gDfZn90
新城「君は今の状況を見ても勝てると思っているのか?」

千早「えっ……」

新城「僕は作戦を命令し、それが行われている。滞り無く。しかし帝国軍の勢いは止まらず、僕らはこうして防戦と擾乱を繰り返している」

千早「じゃあ……じゃあ何の為に……?」

新城「生きる為、兵らが少しでも生き残る確率を上げる為だ。君、生まれは?」

千早「ええと……遠くです」

新城「言いたくないか。ならばいい。僕にも誇れるような故郷は無い。……話が逸れたな。帝国軍が蹂躙する前に村を焼き、毒を流し、それでも負け戦だ。それは決まっている」

新城「だが、僕らは戦争屋だ。望んで戦地に赴き、望んで人を殺す。それが仕事だ。僕は、それを可能な限り効率的にやっているだけだ」ニヤァ

千早(なんて卑屈で、嫌な笑顔……)

千早「……わかりました。もう何も言いません。あなたにはあなたの信念があるようですし。ですが、個人的に言わせてもらえれば、私はあなたが大嫌いです」

新城「結構。君に嫌われようが僕の任務は何ら変わらない。気が済んだら休め。もしかすると君にも働いてもらう事になる」

千早「……」ザッザッザ……

漆原「あ、お帰りなさい」

千早「ただいま……あ」

兵藤「無口だと思ったけどしゃべれるんじゃねえか」

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:50:26.57 ID:P2gDfZn90
千早「え、え?」

猪口「兵藤少尉、大隊長がお呼びで……ああ、千早殿。お疲れ様です」

千早「あの……猪口さん、でしたっけ?私、猫に見えます?」

猪口「いやぁ、さっぱりですな。どう見ても人でしょう」

千早「じゃあさっきは何で……」

猪口「いや、あの大隊長殿が妙な冗談を言うものでつい……失礼しました、副官殿」

千早「副官……?」

猪口「……漆原少尉、千早殿は……」

漆原「いや、知らない。俺もてっきり大隊長の副官だとばかり」

千早「あの、副官って……?」

妹尾「まぁ、補佐役のようなものです。お付きといいますか」

兵藤「そんで、大体の場合愛人とか側室ですね」

千早「あいじ……!違います!あの人は嫌いですから!」

兵藤「マジで違うみたいだね、こりゃ」

妹尾「猫扱いしたから怒ったのかと思いましたけど、それも違うようですね」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:54:43.95 ID:P2gDfZn90
漆原「元はといえば曹長が悪乗りするから……」

猪口「いや、はは、面目ない。後で大尉に謝っておきます」

兵藤「っと、お呼びかかってるんだったか。行ってくるわ」

猪口「あ、自分も行きます」

千早「……良かった、本当に猫として生きるしかないのかと……」

妹尾「失礼しました、千早殿」

漆原「しかし副官じゃないとすれば何故?」

千早「あの、迷い込んでしまったんです。それで……良ければここの事を色々と教えて欲しいんですけど……」

……説明中……。

千早「皇国……ですか」

漆原「驚いた、本当に何もしらないんですね。まさか帝国の……にしても、物を知らなすぎるか」

妹尾「無関係なのは良くわかりました。多分、きちんと話せば保護してもらう事も可能でしょう」

千早「よかったです。このままサーベルタイガーと同じように前線に立たされるのかと……」

漆原「それは無茶でしょう。といっても本物の千早がいないと戦力はかなり落ちるけど……」

妹尾「代わりにはできませんよ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 15:57:43.82 ID:P2gDfZn90
千早「あの、私は軍人じゃないので……敬語はいりません」

漆原「本当かい?ならこうやって喋らせてもらうよ」

千早「はい、それで……漆原少尉は、新城大尉の事を……」

漆原「……君が大尉の副官だと思ったから聞かせてみたんだけど、違うなら言っちゃまずかったな」

千早「いえ、私も酷いと思います……」

漆原「いや、わかってるんだ。あの人は俺達を救おうとしてる」

妹尾「まともに帝国軍と当たった場合、おそらくは二刻と持たないでしょう。それでは味方も撤退できず、恐らくは死ぬだろう我々も無駄死にです」

千早「死ぬなんて!そんな事……」

漆原「素人目に見てもわかるだろ?多分、このまま上手く行っても死人は出るさ、それもたくさん」

妹尾「それを減らす為に、せめてそこに意味を与える為に、大隊長殿は今も手を打っているはずです」

千早「……お二人は、あの人の事はどう思うんですか?」

妹尾「信じるに値する指揮官ですよ。彼についていけば、少なくとも納得して戦える」

千早「漆原少尉は……?」

漆原「……嫌いだよ、大嫌いだ。だけど、勝つ為に必要な人だって事はわかる。悔しいけどね」

千早(この人達は、何なのかしら。さっきから絶望的な事しか言ってないのに、笑っている。こんなふうに笑う人は今まで見たことも無かった)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:01:06.74 ID:P2gDfZn90
千早(春香も、高槻さんもよく笑うけど、こんな笑顔じゃない。いつ死ぬかもわからない戦場で、今も命をすり減らしながらだから?)

千早(……違う。違うわ。私にだってわかる。この笑顔は、命がけだからとか、そんな理由で出来ていない)

千早(彼らにあって私に無いもの……モチベーションの差……)

千早「……ありがとうございました。後で大尉と話をしてみます」

漆原「無事逃げられるよう、ちゃんと戦うよ」

妹尾「安心してください」

千早「はい……はい」

夜。

新城「曹長も困った物だな」

猪口「すみません、まさか本気だったとは……」

新城「そういう冗談は好きじゃない。そもそもそんな事態じゃないだろう」

猪口「は、確かに……」

兵藤「で、どうするんです?無関係の衆民、前線に立たせるわけにもいかんでしょう」

新城「うん、尖兵から一人出して、彼女を送ってもらおう。明日には……」

~♪

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:04:31.15 ID:P2gDfZn90
猪口「……?歌、ですかな?」

兵藤「見事なもんだ……誰が歌ってるんです?」

新城「僕は知らないし、そんな命令は出してもない。休んでいる兵もいるというのに……やめさせてくる」

兵藤「あ、ちょ、大尉殿!?」

猪口「歌を聞いている方が休めそうですがね」

兵藤「あの人にゃわからんのだろうさ」

新城「千早だな?今は……」

千早「そっと耳を澄まして 遠い遠い音楽」

新城「……」

千早「あっ……あの、うるさかったでしょうか」

新城「いや、続けて良い」

千早「……はい」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:07:41.81 ID:P2gDfZn90
そっと耳を澄まして 遠い遠い音楽
君の小さな胸に届くはず
海は満ち引いて 波はふいごの様に
悲しい音楽を街に送る

耳を傾けて ホシの歌うメロディ
あふれる音の中 ただひとつ選んで

雨音 草のいきづかい
風のギター 季節のメロディ
聞こえない ダイナモに掻き消され
人は何故 歌を手放したの

新城「……聞いた事の無い曲だな」

千早「ええ……私の国の歌です」

新城「そうか。ご苦労だった」

千早「え?」

新城「君は慰安の意を込めて歌った。違うのか?」

千早「私に出来るのは、歌う事くらいですから」

新城「だから、労った。それだけだ」

千早「あの、うるさくなかったですか?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:10:31.44 ID:P2gDfZn90
新城「……」

千早「あ……行ってしまった……」

兵藤「照れてんだな、ありゃ」

千早「兵藤少尉」

兵藤「歌、上手いんだな」

千早「仕事でしたから」

兵藤「へぇ、道理で。……明日、千早殿を早馬で送る事になりました」

千早「……はい」

兵藤「自分ではありませんが、自分の班の者にやらせます。ので、今夜はもう休んでください」

千早「でも、もう少しだけ」

兵藤「十分ですよ。大きな音を立てるわけにはいかんので黙ってますが、ほら」

千早「あ……」

兵士「拍手出来んのが口惜しいですな」

兵士「……ぐすっ、素晴らしい歌でありました!」

兵士「北領は自分らに任せてください!」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:13:30.16 ID:P2gDfZn90
千早「皆さん……」

兵藤「ショーは終わりです。さ、楽屋へ」

千早「え?今なんて……」グラッ

千早「あっ……!」フワッ

千早(足元の地面がなくなったみたい。ふわふわして……飛んでいるようだわ)

千早(なんとなくわかる。元の世界に戻るのね。……疲れたけど、学ぶ事もあったわ)

千早(私はたまたまやってきただけだけど、世界のどこかでは今みたいな戦争が行われている。そこにはきっと、私の歌は届いていない)

千早(今までのように漫然と仕事をこなして、人気を取っているだけじゃ駄目なんだわ。地球の裏側まで私の歌を届けて、そして……)

千早(いつか、彼らのように。自分の死を覚悟して戦うような、そんな兵士がいなくなるように)

千早(大げさかしら?歌では不可能かしら?いいえ、きっとできる。私の目標が決まったわ)

千早(歌で、世界を平和にする。私だけじゃ無理でも、私の歌を聞いた誰かが……きっと……)

千早「……う」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:17:02.33 ID:P2gDfZn90
P 「あれ?千早か?」

千早「ここは……ああ……」

P 「ど、どうした千早。大丈夫か?寝ぼけてるか?」

千早「あ、プロデューサー。いいえ、大丈夫です。ちょっと夢を見てたみたいで」

P 「だろうな、実に不思議な寝相だったぞ」

千早「不思議な……?」

P 「とにかく良かった。今日の予定はだな……」

千早「レコーディングですよね?大丈夫です、わかってますから。それじゃ行きましょう。そこでぼんやり残っているつもりで無ければ動いてください」

P 「お、おう!」

千早「……なにしろこれから戦争ですので」

P 「ん?何か言ったか?」

千早「いいえ、何も。それじゃ、行きましょうか」

……。

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/15(月) 16:21:45.04 ID:P2gDfZn90
千早「グルルル」

新城「千早、おいで」

猪口「……大隊長殿、昨夜妙な夢を見たような記憶が」

漆原「曹長もか。実は……」

兵藤「俺もなんか……千早ってこんな顔でしたっけ?」

妹尾「あれ、大尉殿。千早の耳に……」

新城「ん?なんだこれは。何を付けて……布?」

……。

春香「あれ、私のリボン片方どこやったかな?」

小鳥「千早ちゃんにつけてあげたんじゃなかったかしら」

春香「ああ、そうでしたっけ」

P 「さー今日も張り切っていくぞー千早!」

千早「はい、プロデューサー」

http://unkar.org/r/news4vip/1350281551